第7話 二度目のエルフ国
「え、何が起こったんだ?」
アリスの方を見ると、驚いた表情でこちらを見つめていた。そして、すぐに俺に抱き着いて来た。
「え、え?」
何が起こっているのか理解が追い付かない。
「腕が無事でよかった」
俺は右腕を見てみると、先ほどまで失っていたものがあった。
(って、今はそんなことよりも‼)
「何が起こったの?」
「わ、分からない」
(そうだよな)
さっぱり、現状を理解できなかった。すると、リード王子がこちらへ近寄って来た。
「今からエルフ国を案内しますね」
「あ、え?」
目の前の光景に驚きを隠しきれなかった。
(リード王子は死んだはずじゃ……)
それにエルフ国も燃えていない。
「どうかしましたか?」
「い、いや。何でもないです」
理解が追い付かない。
(俺たちは過去に来たってことか?)
呆然としながらも、俺たちはリード王子に案内される形でエルフ国に招かれた。すると、一回目に来た時と同じ現象が起きていた。
「アリス……」
「う、うん。これって」
「あぁ。俺たちが思っていることが起きているよ」
なぜか分からないが、俺たち二人はタイムリープをしてしまった。それも、最悪の事態が起きる前にだ。
それから、リード王子に案内される形で王宮の中に入った。その時、一瞬殺気を感じる。
(何だ?)
俺は辺りを見回すと、そこには誰もいない。
(気のせいか?)
いや、そんなことは無い。それにもし、気のせいだったとしても一回目は感じられなかったことだ。
それから、ウラ様に別室に案内されて、タイムリープ前と同じ会談を行った。そして、俺とアリスは部屋に集まる。
すると、アリスは防音魔法を唱える。
「俺達、タイムリープしているよな?」
「えぇ。でもなんで?」
「分からない。だけど、これはチャンスじゃないか?」
俺の言葉にアリスは首を傾げる。
「さっきまでの行動からして、俺とアリス以外にはタイムリープ前の記憶がない。つまり、俺たちは犯人を捜すことが出来る」
「あ‼」
そして、二人でタイムリープ前のことを思い出す。すると、徐々に吐き気が出てくる。
「だ、大丈夫?」
「あ、あぁ」
ここで引き下がるわけにはいかない。
俺はあの時のことを思い出していき、情報をまとめる。
「一つ目は元凶がエルフの女性だったってこと。そして火魔法を使い手ってこと」
「そうだね」
「それに加えて、王族と近しい存在だってこと」
「え?」
俺の言葉にアリスは首を傾げる。
「あいつの言動からして、王族のことを敬っていなかった。つまり、王族に恨みを持っている存在ってことだ」
「うん」
「王族に恨みを持つってこと。それに加えて俺たちが行動に移そうとしていたってことを認知していたってことは、王族に近しい存在」
「‼」
アリスも納得したような表情でこちらを見つめてくる。
「でも、時間も少ないのにどうすればいいの?」
「リード王子に力を借りよう」
「え、なんで?」
「リード王子はタイムリープ前は死んでいた。つまり敵側であることが一番低い。だとしたら、情報を聞く人材としては最適だと思う」
「そ、そうだね」
行動が決まれば、すぐに俺たちはリード王子の元へと向かおうとした。
その時、一瞬だが、先程の殺気を感じた。だが、アリスは気づいていないようであった。そこで、俺は一つ提案をする。
「アリス、別行動をしよう」
「え、なんで?」
「リスクの分散だよ。俺たち二人が死んだらエルフ国が亡ぶ」
「そ、そうだけど」
アリスが言いたいことはわかる。どちらかが死んだところで回避できる可能性は薄まる。だけど、ゼロにならない限り可能性はある。
「アリスは街の人たちからどんな魔法が使えるのか、どういう人が魔法を得意にしているのかを聞いてくれないか?」
「うん」
「俺はリード王子や、他の人から聞いてみる」
「わかった」
そして、俺たちは別行動を翌日から行った。
アリスが早朝から街に出て行ったのを見て、リード王子の元へと駆け寄る。
「どうかしましたか?」
「リード王子、お聞きしてもよろしいですか?」
「はい」
「この国で魔法を得意としている人物は誰ですか?」
「お母さまと母様のお姉さんかな?」
(へぇ)
「リード王子の叔母様はどこにいるの?」
「えーと、それが分からないんだよね。お母さまとしか会わない人だから」
「……」
(この人なのか?)
でも、しっくりこない。何かがつっかえている。
そこからも情報を集めていき、アリスと情報共有をしていると、あっという間に四日経ってしまった。
(後二日……)
「賭けに出るか」
「え?」
「多分、犯人に近い人物は見つけたよ。でも、その人ではない気がするんだ」
「……わかった」
俺たちはカーラ様の元へ向かうと、そこにはルナとルナのお母さんが立っていた。
その瞬間、直感した。
(この人だ)
アリスも同様に感じていたのか、一つカーラ様に質問をした。
「カーラ様、お姉さんはどうしたのですか?」
「それは、エッカに聞いてくれるかしら? エッカはミマの護衛も兼ねているから」
「なぜ、護衛なのにここに?」
「ミマは病気で表に出てこないの。だから、エッカから言伝でいつも聞いているの」
(そう言うことね)
家族絡みで一緒に居る人には情報を流しがちではあるが、姉の護衛ということもあればなおさら信用が厚いはずだ。
俺とアリスはアイコンタクトをする。そして、俺はカーラ様とルナを守り、アリスはエッカに対して魔法を唱えて攻撃をする。すると、悲鳴が鳴り響いた。
爆風と共に、エッカは嘲笑う形でこちらを見ていた。
「こんな早くバレてしまうとはね」
そこには、体中が紫色に変わり角の生えたエッカに変わっていた。
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出来損ない冒険者に転生した俺は、タイムリープ能力を駆使して、没落王女と共に真実の世界へ導く 煙雨 @dai-612
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