※読み合い企画からのレビューです
魔王軍総司令官アドラブルは悩んでいた
たとえ勇者を倒したとしても、一年間時が巻き戻り、さらに強くなって戻ってくるからだ
その繰り返しは既に19回目を迎えていた──という導入から始まる本作品は、ある種の死に戻り系の物語であるにも関わらず、その内容はかなり特殊である
まず、死に戻りをしているのは、主人公であるアドラブルではなく、勇者のほうである
にも関わらずアドラブルは繰り返しを知覚しており、互いに互いの行動を読み合うため、どちらが絶対的有利というわけでもない
この対立構造は将棋やチェスを思わせる
しかも、この繰り返しは、恐らく勇者が魔王を倒すまで終わらない(と思われる)のだ
タイトル通り、まさに「何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い」である
とは言え、勇者を圧倒的に上回り続ければ、一周に一年かかるこの繰り返しに、勇者が諦めるかもしれない
絶望的だが、頑張れアドラブル
そんな応援をしたくなるほど苦労人の魔王軍総司令官が主人公の本作品、一風変わった異世界小説を求めている方は一度手に取ってみてはいかがだろう