誰一人 救われない話

こた神さま

第一話 かぐや姫




かぐや姫の話を御存知でしょうか?

竹から生まれた、かぐや姫です。


かぐや姫は、月からの使者が迎えに来て、月へ帰っていきます。

この、かぐや姫、実は、宇宙人説もありますね。


そんな、かぐや姫の話を誰一人、救われない話に変えてみましょう。





昔、昔、ある所に、年老いた夫婦が暮らしておった。

その夫婦には、子供がおらず、寂しい暮らしをしておったが、夫婦仲は、とても良かった。


ある日の事。

爺様が竹藪に竹を切りに出掛けると、一本の竹が眩しいぐらいの光を放っておりました。


爺様は、不思議に思い、持っていた鎌で、その竹をスパーン……!!と。


なんという事でしょう。

爺様は、力を入れすぎて、中にいた小さな女の子も切ってしまった。


だが女の子は、奇跡的に命はとりとめた。

……が、顔に大きな切り傷を負ってしまったんじゃ。


爺様と婆様は、その女の子に、かぐや姫と名前をつけた。


不思議な事に、かぐや姫の成長は、早かった。

グングンと成長していき、美しい女性に育った。

顔の傷を除けば……。


かぐや姫の元には、何人もの男が結婚を申し込みにきたが、かぐや姫の顔を見ると、みな逃げるように帰っていった。


かぐや姫は、毎晩、月を眺めておった。

悲しい瞳で月を見つめる、かぐや姫に、爺様は、尋ねた。


「かぐや姫や……。お前は、何故、月ばかりを見ておるんじゃ?」


爺様が問うと、かぐや姫は、着物の袂で、口元を隠し、こう言った。


「私は、他の星から来た者です。私の住む星には、人口が少なく、結婚の相手を探すのも一苦労でございます。そこで、この地球から、婿をと思い、やって参りましたが……。」


そこまで言うと、かぐや姫は、キッと、恐ろしい形相で、爺様を睨む。


「お前が私の顔を傷付けたばかりに、私に近付く男は、おらぬ。私は、お前が……憎らしい!!」


そう叫び声を上げると、かぐや姫は、大きな口を開き、爺様を頭から、バリバリと食べ始めた。


それを障子の影から見ていた婆様は、驚きのあまり、心不全をおこし、死んでしまった。


爺様を食い終わった、かぐや姫は、フッと、月を見上げた。

月から、眩しい光がさしてきて、真っ赤な血で、口を染めた、かぐや姫を照らす。


「あれほど、どんな事があっても、人を殺めてはならぬと申したのに!しかも、食うとは何事ぞ!!」


光と共に、声が聞こえ、かぐや姫は、悲鳴を上げる。

月からの光を浴びた、かぐや姫の身体は、みるみる溶けてしまい、跡形もなく消えてしまいました。


「どうも、伝えられている昔話のようには、いかぬなー。」


そんな声が月から聞こえたような気がした。




めでたしめでたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰一人 救われない話 こた神さま @kotakami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る