外伝1

 コンコンコン───────


 その音が響いたのは、人族大陸のとある王国の王の間であった。


「入れ」


 そう言われて入ってきたのは、純白の衣を身に付けた聖職者────つまり司祭であった。


「失礼します陛下」


「今日は何の用だ?何度も言っているが、教会を増やす件だったら諦めろ」


「その件はもう諦めましたよ」


 司祭はそう言って苦笑した。


「今回は勇者召喚の件です」


「……ほう」


「良い件と悪い件どちらを先に聞きたいですか?」


「不敬罪にでもなりたいのか?」


 王は笑って、


「ご冗談を」


 と司祭は言う。


「では単刀直入に言います。勇者召喚の儀が可能です」


 ガタッ


「それはまことか!?」


「えぇ、嘘偽りはございません」


 王が驚くほど、それは難しく、何よりも儲かるのだ。


「ほう、そうか。では悪い件というのを聞こうか」


 司祭は顔を渋りながらも答えた。


「……可能性の話になりますが一応話させていただきます。勇者召喚は異なる世界から、勇者の素質を持つ者をこのアリウスに呼び出すわけですが、そこには空間の行き来によって体が千切れて絶命してしまう場合がございます。もし、もしそれによって勇者なるものが死んでしまったら────」


「それ以上はよい、気にするな」


「はっ。それでいつ勇者召喚の儀を発動しますか?」


 こう問われた王は笑って


「もちろん───今すぐだ」


 と返すのだった

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私は私と世界をまわる 鈴乃 @kiuchi405

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