バズる

つばきとよたろう

第1話

 私は大学のひょうきんな友達と一緒に、面白い動画を投稿していた。それがなかなか再生回数が上がらなくて、チャンネル登録者も百人に満たなかった。人目を惹く特技があるわけでもない。誰もやってない企画を思い付くわけでもないから、再生回数が伸びないのは当たり前だった。

 それで人気の他のチャンネルを真似してみたものの、再生回数は少しも増えなかった。その上、執拗なアンチがいるみたいで、動画を上げた途端に動画を見ずに閉じるという行為を繰り返されて、視聴維持率を下げられていた。それでも続けてこられたのは、友達がいてくれたからだ。

 あいつがいると、詰まらないことも面白く感じる。馬鹿馬鹿しいこともやってのける。それでもチャンネル登録数を千人超さないと、やっていく気力が湧かないのが本音だった。

「心霊動画を撮ろうぜ」

 そう言いだしたのは、あいつからだった。

「やだよ。俺、幽霊とか怖いし。それにそう簡単に撮れるの?」

「大丈夫、俺にいい考えがあるから」

 あいつは自信満々で答えた。何か秘策があるみたいだった。撮影は無事に終わり、いよいよ動画を投稿することになった。

「きっと大丈夫だよ」

 あいつはそう言ったが、私は不安で胃がよじれそうだった。最初、動画の再生回数は、いつもと変わらず数十だった。

 それもほとんどがアンチが上げている数字なので、数人しか見ていないことに落胆した。ところが、異変が起こったのは、動画を上げて一日が経ってからだった。少しずつではあるが、動画の再生回数が伸びていっている。百を超え、五百を超えて、遂に千を超えてしまった。

 私と友達は声を張って喜んだ。それでも再生回数は伸び続けていた。動画の内容は、私がリビングで雑談をしている映像が映っていた。実はこの部屋、前の借主が事故で亡くなっているという話などをした。ところがその最中に、キッチンのカウンターから青白い顔の、血を流した生首が、ぬーと姿を現していたのが映っていた。この世に未練を残した恨めしそうな顔だった。それを目にすれば、誰もが震え上がるだろう。コメント欄にもその事が言及されていた。

「これヤバい奴だよ」

「その部屋、幽霊がいるんじゃない」

「出たー!」

「落ち武者か」

 再生回数は一気に一万を超えた。それでもまだまだ伸びていた。最終的に十五万まで行って、ようやく落ち着いた。私とあいつは、この結果に大満足した。その日、ビールで祝杯を挙げたのは言うまでもなかった。


 Aさんが投稿した動画には、確かに生首らしい物がはっきりと映っていた。ところが、その後に投稿された動画には、その動画がフェイクで、幽霊は友達がやった偽物だったと語っている。その上、その友達が交通事故で亡くなったことをほのめかしている。しかし、その動画にはAさんがしゃべっている間ずっと、壁際に友達らしい人が映っていた。それが生きた人間とは思えないように、虚ろな顔でまるで生気がなくぽつんと立っていたのだ。それ以降、Aさんのチャンネルに動画は投稿されていない。どこまでが真実か偽物か分からない。

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バズる つばきとよたろう @tubaki10

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