#21 孫沁文『厳冬之棺』
最近、華文ミステリがアツいと聞きます。日本の新本格ミステリの影響をもろに受けた本格愛溢れる作品が多く書かれているのだとか。ということで先日、初めての華文ミステリとして孫沁文の『厳冬之棺』を読んでみました。
舞台は現代の上海周辺。湖畔の大豪邸に住む一族に嬰児の呪いが襲いかかり、次々と密室殺人が起こります。一つ目は、地下室で絞殺されたのに地上からの通路が水で満たされて扉が開けない密室。二つ目は、密閉されて扉の前に人がいるのにいつの間にか中の人物が殺されてしまう密室。三つ目は、湖上に吊り下げられた部屋の密室です。すべてへその緒付き。
いずれにも独創的で面白いトリックが用いられています。一つ目の水の密室のトリックはさすがに不可能だと思いますが、ビジュアルとしては悪くない。三つ目が一番変てこでトリックのための密室という感じですが、面白いから全然良いです。
思えば、2010年代以降の日本の本格ミステリ界隈は多重推理と特殊設定がもっぱらブームになっていて、密室ものに代表されるようなハウダニットものの作品は少なくなってしまったように感じます。その分、海を渡った中華圏でこのような力の入った密室ものが書かれているのは心強い。もっともっと書いてほしいです。
ということで、これで八月は終わりなので連載も終了です。この連載に載っていない密室ミステリの名作は、私が読んでいないか読んでいても内容を忘れたかです。なお、私は今現在、鮎川哲也賞を狙って密室ものの長編ミステリを鋭意執筆中。九月中旬くらいには一旦カクヨムにもアップしようと思うので、作者の小野ニシンをフォローしておいていただけたら嬉しいです。
永久不滅の密室ミステリたち 小野ニシン @simon2000
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