執務室で、『アエリア』と…

邸の中に戻ってきた俺をメイドや執事よりも先に迎えたのは『アエリア』だった。

特に何かをしたわけではないのに、なんだか好感度が上がっているような気がする。

なぜだ?


「イツキ、お帰りなさい。

えっと、貴方の執務室ができたのでこちらに」

「執務室?」


『アエリア』に案内され2階へと向かう。

執務室は、2階中央だった。

俺たちの後ろをメイドと執事も付いてくる。


「隣が、貴方の寝室になっています。

執務室と寝室は中側から行き来も可能です。

また、執務室の裏手には書斎…と言うには大きいので書庫の方があっているかもしません。

こちらも、行き来が可能になっています」


中央は、一括りの俺のスペースのようだ。


『これが、あの『アエリア』さま?』

『甲斐甲斐しい』

『出来る嫁』


見る見る『アエリア』の顔が赤くなっていく。

これは、コメ欄の音声をオフにした方がいいかもしれないな。

寧ろ、聞こえるのは俺だけでいい気がする。

配信ソフトの出力を変えれないか試すことに。

そうしていると、別ウィンドウが表示される。

お、いけそう。

OBSの音声出力をスピーカーじゃなくて…そうそう俺だけに設定して。

ちなみに、出力に全く知らない出力先ができていた。

たぶん、これがそうだとおもう。


『『アエリア』さまに届け、俺たちの声』

『『アエリア』さま、好きだ』


コメ欄が騒いでいるが、『アエリア』は反応を示さない。

多分、いいはずだ。

執務室に入ると、大きな机と椅子が出迎えた。

あれが、俺の席なのだろう。

ただ、左隣にも席がある。


「正面がイツキの席よ。

一応、私も補佐として席を置いてみたの」


それ以外にも、左には応接セットとしてソファとローテーブルが置かれているし、花瓶や絵画などが飾られている。

騎士って実際無人島でなんの役に立つんだろう。

それこそ魔物とかが出たら討伐?

ダンジョン探索とかあればまた違うかもな。


「ありがとう、『アエリア』」

「ふふ、どういたしまして。

それで、これからの相談をしたいのだけど」


そう言って、『アエリア』は自身の席に着いた。

俺も、それに倣って席に着く。

机の上には、砂浜から邸、広場を移した地図が置かれている。


「いまのところの探索具合はその地図の通りよ」

「ああ、俺が行き来をしたあたりだな。

砂浜とこの広場か」

「ええ、いまは使用人と私しかいないからまだ探索ができていない状態なの。

出来れば、周辺の探索をしたいのだけど」

「ああ、そのことなら。

新しく漂着者を迎えたんだよ」


俺は、アイテムボックスを開き『アエリア』に確認を促す。

彼女は、首を傾げていたがアイテムボックスを開いて驚愕する。


「こんなにいっぱい…」

「みんな、眠っているところだから誰から起こした方がいいだろうか?」

「それでしたら、まずは職人の方たちと弓聖さまを」


『弓聖さま』か、やっぱり凄いってことだよな。

剣聖の弓版ってことだよな。

職人は全部で10人。

それぞれの職業に、2人ずつだったな。


「じゃあ、最初は料理人かな」

「ええ、メイドたちも料理はできますがいてくれると助かります」


料理人は、『クラセル』と『フローラ』の2人である。

『クラセル』がLRで、『フローラ』がURだったかな。

アイテムボックスを操作して、2人を起こす。

執務室の中に、光が現れる。

それが、人の形を作っていく。

コック帽を被った青年と真っ白なキャップを被った少女が現れた。

2人共、上下真っ白なコックシャツとズボンを履いている。

青年は、前掛けのような黒いミドルエプロンをしている。

少女は、淡いピンク色のタイをつけているし、同色の前掛けのようなショートエプロンをつけている。


「『クラセル』と申します」

「『フローラ』と申します」


2人は、状況を飲み込めていないようだが『アエリア』を見て挨拶をした。

知り合いなのかと思ったが、彼女の顔を見ると首を横に振られた。


「俺は、イツキと言います」

「私は、『アエリア』…一応言っておきますが、主は私ではなくイツキですので悪しからず」


『アエリア』が威圧するようにそう言った。

2人は、肩をビクつかせる。


「2人にはいっておくとここは無人島のようなんだ。

食料の備蓄とかには問題はないと思うから食事の準備をしてもらいたい。

2人にも、アイテムボックスの共有をするので好きに使ってほしい」

「「畏まりました」」


2人は、メイドの1人に案内されるように執務室を後にした。


「イツキ、その…」

「ああ、俺もこういうの慣れてないから『アエリア』が居てくれて助かるよ」


腐っても公爵令嬢。

領地経営とかの勉強もしていたんだろうな。と思った。



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『クラセル』と『フローラ』は、全く別の世界から来ています。

『クラセル』が料理全般。

『フローラ』は、料理人ではあるけれどどちらかといえばパティシエールである。

お菓子に関してだけは『クラセル』よりも『フローラ』の方が上。

LRは、全般。

URは、特化と言う感じです。

ただし、職人はです。

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