あとがき



 これにて『醒睡笑』抜粋翻案、完結とさせていただきます。

 みなさま、お楽しみいただけたでしょうか。


 原典の『醒睡笑』は、キャプションにもありますとおり、浄土宗の僧侶安楽庵あんらくあん策伝さくでんが著したものです。

 序文には「子供のころから、面白い話を耳にするたび、それを反故の端に書き留めておいた」とあり、当時流布していた多彩な笑い話を収集し、一冊にまとめたものであることが分かります。


 策伝さくでんはこうした笑い話を法話に活かし、仏の道を笑いを交えて面白おかしく語り聞かせていたようです。それを京都所司代しょしだいの板倉重宗しげむねに披露したところ、

「面白い! あなたの話、書物にまとめたほうがいいんじゃないか」

 と勧められ、その言葉にしたがって執筆されたのが『醒睡笑』なのだとか。


 大本の『醒睡笑』には千を超える笑話が収録されていますが、後にそのうち三百話余りを抜粋した版本が出版されました。今回の抜粋翻案は、この版本をベースにしています。


 読んでみると、なにかこう、思い出しますよね。落語や漫才が持つ笑いの空気感を。ボケかた、話題の広げかた、オチの付けかた……時代や文化背景は違っても、どこか現代の笑いに通じる雰囲気がある。

 ああ、日本のお笑い文化は、こんな大昔から連綿と繋がってきてたんだなあ! そう思うと、なにやら感慨深いものがありますね。


 翻案するうえで最も重視したのは、「原典のもつ面白さを、現代人にもスッと受け入れられる形で読みやすく提供すること」でした。なにしろ、元になった本は江戸時代初期、大阪の陣から十年ほどしか経っていない時代のものです。文化、常識、言葉づかい、何をとっても現代とは大きく異なっている。そのまま書いても何が面白いのか分からない部分はかなりあります。

 そこで、話の面白さを読み取るために必要と思われる文化背景について、適宜説明を補いました。また、ひとつひとつの単語についても、原典そのままの表現では伝わりにくい場合には通じやすい言葉に置き換えました。

 場合によっては、オチやセリフなどをいじったところもあります。


 とはいえ、なるべく当時の雰囲気、原典そのままの味わいを皆さんにも味わってほしい。どだい、こういうものは、原典そのままのままが一番面白いのです。ですから、余計な手を加えすぎないよう、最小限の改変にとどめるよう心がけました。


 これを読んで、みなさんが「面白い!」と感じてくださったなら、こんなに喜ばしいことはありません。

 また、ここから興味を抱いて原典『醒睡笑』を読んでみようと考える方が一人でもいたなら、これはもう、僕にとっては大勝利です。今ならしっかりした全訳本が電子書籍で手軽に手に入りますから、もしよかったらいつか読んでみてください。


 それでは皆さま、ここまで全五十回にも及ぶ連載にお付き合いありがとうございました!

 皆さんは、どの回がお好きですか? ぜひ、お気に入りの回をコメントなどでお聞かせくださいね!

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眠気ふっとぶオモシロ小話――『醒睡笑』 外清内ダク @darkcrowshin

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