槇羽第一機甲装備班。 ――青防の守り人 外伝――

時雨 莉仔

序章:ある墓地の中で

「……」

ざっ、ざりっと歩くたびに地面から鳴り響く、地面に敷き詰められた砂利の音。


晴天のとある墓地内。6月の晴天の中でも別格に涼しい――否、涼しすぎるこの墓地の中は、行き交う人影は平日だからかまばらで、墓にもいろいろな表情が見えた。その一つの前に私は居る。


墓には”藤代家 墓”と簡素に書かれた文字。


「……久しぶり、だな」

服装は八分袖の、黒かつ無地のカットソーとジーンズ――私服姿の私は、その墓をゆっくりと一瞥し、添えてある枯れた花を気づくと、そっとその花に手を伸ばす。


「――綺更きさらさん」


枯れた花に手が届きそうになったその時、ふと私に向けてかかる若い声。綺更と呼ばれた私は声の方向――左方向を見るとそこには二人の、喪服を着た男女が、花を携えながらこちらにざっ、ざっと砂利とコンクリート道の上を歩いてくるのが見える。

「今日は仕事じゃないんですか?」

男はそう言うと花を取り替えるために「すみません」と私に捌けるように促す。

「いや、今日は夜勤だ。勤務になる前に”ここ”に寄りたくてな。――八回忌か……?」

捌けながら傍らにいる女性に聞く。すると彼女は首を横に振り

「いえ、十回忌です」と答える。私は

「そうか……」

と返す私。

(あれからそんなに経つんだな……裕希那ゆきな……)

そう思うと同時に、眼前の墓に目をやる。


裕希那――本名を藤代 裕希那と言う、この墓に眠る”彼”は、私の自衛隊時代の部下の一人であり、同時に”藤代重工業”というフレーム用機器メーカーの次期後継者であり――




――同時に、最愛の人だった。

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槇羽第一機甲装備班。 ――青防の守り人 外伝―― 時雨 莉仔 @yuzuriha0605

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