蜘蛛

 結局馬車を拾って、途中で降りてから家につくまでつくまで30分ぐらい時間が掛かってしまった……


 完全に降ろしてもらうところを間違えた。


 まあいい、取り敢えず家にはついたし、一度荷物を置いてから村で買い出しを済ませるとしよう。


 家の壁には手入れされていないせいで、ツタが伸びているが大きさ的には悪くないし、きちんと畑もある。


 「さぁーておっじゃましまーす!」


 こうして俺はこれから始まる新生活に期待を膨らませながら家のドアを開けた。


 すぐに締めた。


 ………扉から見える限りの家の奥には背中にドクロににた模様があり、数々の家畜に被害を与えて来た全長1mはあるであろう大蜘蛛、デットスパイダーがいた。


 「待て待ておかしいだろ!?いくら整備されてないとはいえ、なんでデットスパイダーがいるんだ!?」


 一体どこから入ったのだろうか、基本デットスパイダーは森の中で巣を作らずに過ごすはずだ。


 「落ち着け俺、デットスパイダーは単独でしか活動しない。つまりあの1匹だけだ。しかもでかいといえどただの蜘蛛」


 この場合はでかいということが問題だ。


 何を隠そう俺は大の蜘蛛嫌いだった、戦場で遭遇した時はいつも魔法で焼き払っていたが、今はそんなことはできない。


 家に燃え移ってしまうし何より、今の俺には


 「魔力がない」


 だから直接武器で戦うしかないのだが、持っている武器と言ったら短刀一本だけだ。村で一式取り揃えようとしたから必要最低限の武器しか持っていないので、剣などない。


 「やるしかない……のか……」


 俺は汗ばむ右手に短刀を握りしめ、覚悟を決めてドアに左手を掛ける。


 「うぉぉぉぉ!!!」


 俺はドアを開けた瞬間にデットスパイダーに向かって走り出す。それと同時に、デットスパイダーも俺に気付いたようだ。


 「シシュー!!!」


 デットスパイダーは俺に向かって糸を吐き出す。


 俺は左手でそれをガードし左手に蜘蛛の巣が絡みついてしまうが問題ない。真に恐れるべきはあの屈強な顎だ。


 噛ませる隙すら与えないよう距離を詰め、短刀でデッドスパイダーの首を切り落とす。


 なんとか倒して一安心していたのだが・・・


 ブシューと何か音がしたかと思うと首が切り落とされて残った体から体液が噴出しそれがもろに顔にかかる。


 「あぁぁぁぁ!!!ギャァァァァ!!!あぅぇ……」


 急いで水筒の水で顔を洗い流す。


 「だめだ……パシュパシュする……」


 最悪だ。


 結局この日は飛び散った体液の掃除とリビングとダイニングの蜘蛛の糸の掃除で1日が終わってしまった。まだ寝室と廊下の蜘蛛の糸それに、二階が残っている。


 「巣は作らないくせに糸だけは撒き散らしやがって……」


 仕方なく今日はリビングで寝たが、こんな生活が続くなんてのことはたまったもんじゃなかった。


 「幸先悪いなぁ」


 こうして俺のスローライフ生活1日目が終わった。


そして翌日、 朝、俺は蜘蛛が顔を這う感覚で目が覚めた。


 「あぁぁぁぁ!!!!」


 10匹あまりの蜘蛛が俺の顔を這っていた。


 こいつらは魔力を帯びていないただの子蜘蛛だったが気分は最悪だ。


 「マジックウインド!・・・あぁ忘れてた!!」


 俺は蜘蛛を風魔法で吹き飛ばそうとしたが寝ぼけてたからか魔力がないことを忘れていた。


 すかさず俺は掃除用に持ってきていたほうきを掴んで振り回して蜘蛛を追っ払う。


 「はぁはぁ・・・なんとか追っ払ったか・・・」


 こんなんじゃ俺のスローライフ生活など送れるれるわけない。それにまだ追い払っただけだ。どこかにいる。


 早急なる清掃が必要だった。


 「昨日はリビングとダイニングを掃除したから、次は廊下か……」


 俺は昨日に引き続き掃除を始める、ほうきで蜘蛛の巣を巻き取っていくのだがいかんせん蜘蛛の巣が多すぎる。


 リビングから寝室、倉庫部屋につながる廊下を掃除していたとき、ここで俺は2階につながる階段を見つける。


 「あぁここから2階に行けるわけか……しかも見取り図では3階もあるんだよなぁ」


 思ったより家が広かった嬉しさと掃除のめんどくささで頭がぐちゃぐちゃになる。


 ここから俺は1時間かけてなんとか廊下の蜘蛛の巣を全部取っ払った。


 俺はいよいよ寝室のドアに手を掛ける


 「さぁ……開けるぞ……」


 快適なスローライフ生活を送るためには快適な寝床が必要不可欠だ……俺はほうきを構え覚悟を決めて寝室のドアを開けた。


 「っ!?」


 俺は思わず絶句する


 ベッドの上には10歳ぐらいの年齢の女の子が心地よさそうに睡眠をとっていた。

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異世界転生ブラック戦場 谷春 蓮 @asutorarutai

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