第9話

沙織が花凛のパソコンに取り組む姿を見守る中、花凛はその不安をどうにかしようと心を落ち着けながら、窓から見える夕焼けに目をやっていた。部屋には暗い影が差し込み、静寂が広がっている。


「花凛、もう一つ気になることがある。」沙織が突然話し始める。「このプログラムには、私たちの知らないプロトコルが含まれている。これはただのセキュリティシステムの一部ではなく、もっと複雑な意図があるかもしれない。」


「複雑な意図?」花凛は心配そうに沙織を見つめる。「それって、どういう意味?」


「このプログラムが私たちのシステムに侵入してきたのは、偶然ではない可能性がある。」沙織は考え込みながら言う。「何か大きな計画が背後にあるのかもしれない。もしかすると、私たちの技術やデータを狙っているのかも。」


その時、パソコンの画面が突然暗転し、エラーメッセージが表示される。「重度不正アクセスの検出」とだけ書かれたメッセージが、部屋の静寂を破った。


「これは…!」沙織は驚きと焦りを隠せずに画面を見つめる。「私たちが解析していたプログラムが、何かアクションを起こしてきたみたい。」


「どうすればいいの?」花凛は慌てて尋ねる。


「まずは、パソコンのネットワークを切断して、さらなる侵入を防ぐ必要がある。」沙織は急いでネットワークケーブルを抜き、パソコンの電源を落とす。「それから、私たちが手に入れた情報を元に、このプログラムの完全な分析ね。」


「でも、このままだと問題がどんどん深刻になってしまうんじゃない?」花凛は不安を露わにする。


「その通りよ。でも、まずは冷静に対処することが大事。これ以上の被害を防ぐためにも、慎重に進めていく必要があるわ。」沙織は力強く言い、再びパソコンの前に座る。


花凛は沙織の指示に従い、パソコンのセキュリティチェックやデータのバックアップ作業を始める。二人は協力して問題の解決に取り組みながらも、背後に潜む危険に対する警戒を怠らなかった。


「これが何かの前触れかもしれない。」沙織は言う。「私たちが直面している問題は、単なるウイルスやハッキングに留まらないかもしれない。今後の展開に備えて、万全の準備が必要だわ。」


「わかりました。」花凛は頷きながら、今後の対応策について考え始める。

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コードの中の愛/東京は雨。 紙の妖精さん @paperfairy

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