恋人は砂かけ婆②
崔 梨遙(再)
1話完結:1100字
探偵事務所兼超常現象解決所を営む黒沢影夫は、砂かけ婆をカフェで待っていた。黒沢は、砂かけ婆と大学生の翔太の恋愛を応援したという経緯がある。そして、翔太の母の操と黒沢は同棲していた。砂かけ婆からもらった惚れ砂を使って操を自分のものにしたのだ。
「待たせたな、若僧」
「いえ、お忙しいところすみません……って、あんた砂かけ婆か?」
「そうじゃ、何かおかしいか?」
「若返り過ぎとちゃうか? 今、40代くらいに見えるで」
「ずっと若いエキスを吸っておるからな」
「あんた、翔太君の生気を吸ってるんか? ほな、翔太君は干からびてるんか?」
「そんな漫画みたいな展開は無い。翔太は若いままで元気じゃ」
「ほな、その姿はなんや?」
「妖怪を舐めるな。妖力を使えば若返ることも出来るわい。若返りの砂もある。流石に20代まで戻るのはしんどいがな」
「今、幸せなんか?」
「幸せじゃ。で、今日は何の用だ?」
「惚れ砂の効き目をなくす砂がほしいねん」
「それは渡せない」
「なんで?」
「それを渡してしまったら、惚れさせて、遊んで、飽きれば別れてまた遊ぶということが可能になってしまうじゃろう」
「あ、そうか……」
「惚れ砂は遊びで使ってはいかん。話はそれだけか?」
「待ってや、今、3人に惚れ砂を使って修羅場になってる奴がいるねん、そいつだけ助けてくれや」
「知らんわ。自業自得じゃ」
「まあ、そう言わずに」
「……これからも儂と翔太の味方でいてくれるか?」
「ああ、勿論や」
「わかった、2回分、2人分だけ渡す」
「ありがとう! 助かったわ。あと、若返りの砂ってない?」
「ただいま帰ったで」
「あなた、お帰りなさい」
「待ちくたびれたぞ、この状況を早くなんとかしてくれ」
「剛太郎さん、惚れ砂の効き目をなくす砂は無いらしい」
「えー!」
「私達3人はどうなるの?」
「重婚できる国へ行けば? とにかく、僕では対応出来ない。4人とも帰ってくれ」
黒沢は剛太郎と3人の女性を事務所から追い出した。そう、黒沢は惚れ砂の効き目をなくす2回分の砂を、自分のために使おうと隠し持っていたのだ。“操よりもイイ女がいれば、乗り換えよう。あと2人は、どんな女性でも手に入る”と思いつつ、とりあえず黒沢は言った。
「これを使うで」
「何、これ?」
「若返りの砂や」
「どう?」
「鏡を見てみろや」
「うわ、若返った! 20代に見える!」
操を抱き締めながら、笑みを浮かべる黒沢だった。黒沢はまだしばらくは操との生活を楽しむことにしたのだ。黒沢はクズだった。クズな男には、ご用心!
恋人は砂かけ婆② 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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