第23話

俺が品川先輩に案内され風紀委員会の部室に入ると、そこには2つのオペレート用の端末と、そこに座るひとりの女性が居た。


「あっ、会長!丁度いいところに。今すぐ第1実験室に移動をちょっと面倒な事になりそうです」


オペレート用の端末に座った女性はヘッドホンを外し、品川先輩に話す。


「わかった。すぐに行こう。あと、人を集めておいてくれ」


「分かりました。お願いしますね。会長」


女性にそう言われると、品川先輩は、部室を出て行った。


「で、君が訳あり君だね。私は、理学科、3年の稲田菜月宜しく」


「あっハイ。宜しくお願いします。稲田先輩」


自己紹介は、しなくても良さそうな雰囲気だったので、取り敢えずはやらないで置いた。


そう言えば、魔法科だったり魔工科以外の科の人と喋るのは初めてだな。


何故か生徒会は、魔法科と、魔工科しか居ないからな。その下の議員会にはちゃんと参加している様だが。


「あの、オペレートしなくても良いんです?さっき、品川先輩が行ったんじゃ?」


「ああ、あのね。会長は何もしなくても問題ないの。私がオペレートを始める前に、事が解決しちゃってるから」


化け物かよ。


「取り敢えず、会長に色々教えては貰ったんだよね?どう?理解出来た?」


「はい、出来ましたけど……。それがどうかしました?」


俺がそう言うと、稲田先輩は目を少し見開くと、口に手を当て典型的な驚いてる感じを出す。


というか、むしろ普通に、驚いているんだろう。


「そ、それは本当?騙されてるとかじゃないて?」


騙されてるって、会長に対しての信用無さ過ぎじゃ無いか?


いやでも、実力は認めてるのか。


「騙されてるって、そんな事をして何の得があるんですか?」


「えっ、でもあの会長が人にちゃんと説明が出来るなんて。大体の場合、自分に任された新任の教育すらも、他の人に任せちゃうのに……」


まじか、あの人そんなタイプだったのか……。


いや、もしかしたらそう言うのが得意では無いから、いつもは人に任せていたけど、今回は特別な例であるから。と言う事なのかも知れないな。


俺がそんな事を考えていると、何かを思い出した様に稲田先輩は、端末に何かを打ち込み始める。


「これで良しっと」


「もうちょっとだけ待っててね。須田君」


やっぱり俺の本名知ってた。ちゃんと名前知ってた。


自己紹介なんて必要無かった。勝ったな。


一体何に勝ったかなんて正直自分にも分からなかったが、そんな気持ちになったとしか言いようがなかった。


しばらくすると、部室のドアが開き中に人が入ってくる。


「ただいま戻りましたって、誰そいつ?」


「りーちゃん。いきなりそいつ呼ばわりは良く無いと思うけどな。取り敢えずこの子は」


稲田先輩は、俺の事を紹介しようとすると、入ってきた方の女性は「あっ」と言って思い出したかの様に、話す。


「君確か、入学式の時の子だよね?それと、今回の訳あり君の」


また訳あり君か、それ風紀委員会の中では、俺の事訳あり君で通ってたりする?


「須田英治です。宜しくお願いします。先輩」


「あっ私は、白鷺李依宜しくね。えっと……あと2年で、魔法科だよ。こちらこそ宜しくね」


白鷺先輩はそう言うと、部室にある椅子に座る。


「はあ、確か今日はあと2人だったよね?なっちゃん」


「はぅー。りーちゃん新人君が居るまでその呼び名しないでよぉ〜」


「あ、ごめんごめん。今度から気をつけるよ」


2人がそんな仲良し会話を披露し、俺がポカンとしていると、そこに部室のドアが開き品川先輩ともう1人知らない人が入ってくる。


「よし、全員集まったな?」


「三原は?」


稲田先輩がそう言うと、品川先輩と一緒に入ってきた男が答える。


「僕はそんな事どうでもいいんで、これ続けますよ。と言っていましたよ」


そう言われると稲田先輩は呆れたような顔する。


「じゃあ、放っておきましょうか、何かあったら連絡入れると思いますし」


稲田先輩がそう言うと、俺以外の全員がこくりと頷く。


「そう言えば、自己紹介してなかったよね、北橋」


白鷺先輩がそう言うと、男はそう言えばと言って自己紹介を始める。


「北橋茂、魔法科、2年。宜しく」


そうやって、自己紹介を短く済ませると、品川先輩が話し始めた。


「これで終わりでいいな。須田。取り敢えず、お前は一週間に一回このチームでやって貰う。いいな」


品川先輩が問いかけてくるので、俺は、それにこくりと頷いた。


一旦、その場は解散となり俺は生徒会室に戻る。ー否。戻ろうとした。


いや、もっと正確には戻る途中の廊下で、いざこざが起きていた。


廊下で起きていたそれには、大量の野次馬がおり、その先にある階段が登れない。


またか……。回り道していこうか……。


俺がそう思い、回れ右をしようとすると、中の方から魔術陣が浮かび上がる。


「辞めろって!そこまでやる必要は無いだろうが!」


「五月蝿い!どうせお前なんかには分からないだろうが!」


男がそう言うと、魔術陣が魔法を発動しようとする。


すると、遠くの方から魔法が飛んできて魔術陣がガラスの割れるような音と、ともに砕ける。


「風紀委員だ。魔法の使用、諸々……取り敢えず来い」


説明が嫌になったのか、飛び込んで来た青年はそのまま魔法を使った男を連れていこうとする。

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転生賢者~転生をした最強賢者、ある日を境に魔法に目覚める~ 柊ユキ @hiiragiyuki

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