推し活は、お仕事です!!??
狐
第1話
みんなは、推しているキャラクターとか好きな本とかはある?
きっと多くの人が「いる」、「ある」と答えるんじゃないかな。
中には、グッズを買ったり、コラボカフェとかに行ったりする人もいると思う。
この物語の主人公たちは、そんなみんなと同じ、キャラクターを推したり、本を読んだりしている人たち。
そんな人たちが、その本の世界、推しているキャラクターのいる世界に迷い込んでしまったら、どうなるだろう。
覗いてみない?
─────────────
俺の名前は石川亨。
趣味はアニメ鑑賞と読書、至って普通の高校生...のはずだった。
ものの数分前までは...
一度、話は一時間と数分程度前に戻る...
「やべっ、このままだと授業に遅れる!!」
俺の家から高校までは、電車に乗って小一時間。
いつもなら、朝は親に起こしてもらっているが、今日は仕事で不在。
そして、無事起床失敗。
現在は、とにかく少しでも早く学校に行くために、準備をしている。
「朝食は...今日は仕方ないか。」
食事は諦め、制服に着替え持ち物を用意する。
鞄には、教科書、筆箱、それからスマホと財布。
「あ、これは忘れちゃだめだな。」
いつも電車に揺られている間に読むことが習慣になっている本を、慌てて鞄に突っ込む。
そして、走って家から飛び出し駅へ向かう。
幸い、駅までは走れば五分もかからずに着くし、学校に間に合うかも...なんて、希望を抱きつつ、無事駅に到着。
ちょうど来ていた電車に慌てて乗り込み、
「ふぅ...なんとか間に合いそうでよかった」
一息つきつつ、バッグから本を取り出す。
最近読んでいるのは、異世界転生系の本。
主人公は不慮の事故によって死に、神様の手によって異世界に転生した。
そして、その後は...まぁ、王道系のストーリーではあるがレベルを上げ、スキルを身につけ戦っていく。 そんな感じで、ストーリーは進んでいき...今俺が読んでいる三巻では、剣術学園に入学したところだ。
王道系のストーリーとは言ったが、こういうジャンルは何冊も買ってしまう。
そろそろ金欠にでもなりそうだが...
なんて、考え事をしながら本を読み進めていくと...
「次は、靄ヶ淵ー。靄ヶ淵ー。」
目的地到着のアナウンスが聞こえ、
「今日はここまでか」と、本にしおりを挟み鞄へ。
そして、すぐに駅に到着。
駅の外に出て、学校方面へ歩き始める。
まだ、教室にいないといけない時間までは十分程度ある。
「これなら...」
「おい!! 止まれ!!!」
不意に駅の方から、誰かの声が聞こえる。
かなり、切羽詰まった感じだが、何かあったのか...?
なんて、のんきに考えている場合ではなかった。
気づいたときには、俺は地面に倒れ込み、視界に映っているのは青空だけ。
「あ...?どうなって」
そして、ようやく体中に痛みがやってくる。
「ぐっ!!??」
何かが肌を伝っている感覚。
さらに、だんだん視界が赤く染まっていく。
「血..なのか?」
よくわからない、でももう意識を保つのも限界だ。
これで、終わりか...あの本、続き読みたかったなぁ...
──────────────
そして、俺はそのまま意識を失い、今に至る。
俺は今どこにいるか、それはわからない。
そんな何もわからない俺の目の前にいるのは、羽が背中に生えた神々しいオーラを纏う人型の何か。
「すみません、手荒なまねをしてしまって。」
突然に話し始める。
「あの、あなたは...?」
落ち着きたくても、落ち着けない状況だが、なんとか精神を保ち情報を集めようと質問する。
「薄々気づいているのではないでしょうか、私は神と呼ばれる存在です。
そして、ここは天界。私のほかにも、たくさんの神が生活を共にし、様々な世界を世に存在させています。」
「...!」
もう驚きすぎて声も出なくなってきた。
予想的中だったが、これを喜べばいいのか、それとも悲しむべきなのか。
「あの...俺は死んだってことなんですかね?」
少し神は顔を曇らせたが、答える。
「そうです。ただ、あなたの死はわたしが仕組んだものに過ぎません。」
ちょっと待て、どういうことだ?
俺は、この神のせいで死んだのか!?
「落ち着いてください、ちゃんと説明しますから。」
今にも殴りかかりそうな俺の殺気でも感じ取ったのか、慌てて俺を止める。
「確かに、あなたを殺したのは私です。ただ、それにはちゃんと事情がありまして。」
「早く、説明してくれ。そして、それが終わったら俺を元の世界に戻してくれよ。」
「それは出来かねます。」
少し申し訳なさそうな表情を浮かべつつも、すぐに冷徹な表情を取り戻し宣告する。
「今天界には、あなたを含めたたくさんの人がいます。
その理由がわかりますか?」
と、質問を投げかけられたものの見当もつかず首をかしげる。
その様子を見て、神は続ける。
「あなたは、人の世で本だったりアニメが好きだったのですよね。」
もちろん、正しいからうなずく。
「実は、今その世界が危険な状態になっていまして。
私たちが手を打たなければ、人の世から本やアニメなど、すべての創作物が失われてしまう可能性すらあったのです。」
「...は?」
「驚くのも無理はありませんが、私たちはそれを解決するため、ある条件を定め大量の人を集めました。」
条件...? もう、話の流れがつかめなくなってきた。
「その条件は、推し活をしている人です」
「....はぁ!!??」
推し活は、お仕事です!!?? 狐 @kana93738483939822
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