第11話 アブネガシオン
「ヴィオラアアアアアアアアアアア!!」
「下がりなさいレノーグ」
「んてめええええブッ殺すウ!!」
「———少年、大丈夫か?」
「えっ…」
ジャンヌ・ダルク…と形容するしかないような少女だった。横暴と抑圧を司る悪者を退け、弱き者を救う。でもなんで全身甲冑を…?? と気が抜けた一瞬の内。
『殺せ殺せ!!肉片すら残さずにミンチにしてやれ!!』
激昂する赤毛の女が杖を振るうと同時に氷の大剣が無数に生成され、舞い踊るようにして甲冑の少女の全身を切り刻むように襲い掛かった。が、刻まれようとしている当の本人は余りに悠長にリボルバーを構えた。
「『
銃声、銃声、銃声、銃声、銃声…そしてまだまだ続く銃声。無数にあった筈の氷の大剣の群れが瞬く間に消えて無くなっていく。弾丸が命中すると共に、燃えながら爆発したのだ。
「あり得 い。
「え? 今なんて ったの?」
俺の
「澪ちゃ …。! 澪ちゃん、少し喋 続けてみて」
言葉だけでなくジェスチャーでも意図が通じるように大袈裟に身体を動かす。
「え と…。あの女の子、爽 んと同じでハンドガ ?を使ってるよね。もしかし 、あの子も私達と じでこの
「やっ りだ」
言葉だけじゃない。よくよく澪ちゃんを観察していると、唇の動きや瞬きのタイミングが突然ズレてしまっている。密かに小石を投げてみた結果も、投げる→宙を落ちていく→床に落ちるという順序の「宙を落ちていく」瞬間が見えなかった。
(というよりもこれは…動画を見ている時に
「悔しいけどやる なぁテメェ!! だ 『コイツで終わりだ』!! その珍 な
「 んなの避けられないよ!」
荒れ狂う圧倒的な水流。周囲の家や人々すら飲み込みながら完成した濁流が甲冑の少女を覆う。俺はいつの間にか天目掛けて引き金を引いていた———
『エゴイスタ! …え』
先程まで視線の先にいた筈の少女の姿が掻き消えている。静止した蒼一色の世界で1人彼女の姿を探す、探す、探す…。
『見つからない…スキップしたって事か?』
なら甲冑の少女は無事の筈。俺は濁流に飲まれそうな件の少年を抱えて澪ちゃんの側に戻って来た。そして指を鳴らして、再始動———
「ヴィオラ…アンタに会いたいよ」
「ならそうするといい」
銃声。勝利を確信した赤毛の女は、背後から頭を撃たれてそのまま地に臥した。濁流は解けるように霧散してしまった。
「ヴィオラ…レノーグ…くっ。『
「逃げられたか。さて…」
「え、なんで…?」
少年にローブを被せ介抱する澪ちゃんに、何故か甲冑の少女はアブネガシオンの銃口を向ける。
異世界銃士 〜俺と同じ時間を生きられる者はいない〜 溶くアメンドウ @47amygdala
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます