この理不尽な世界に、呪いではなく祈りを

学校代表として留学を打診されるほどの優等生でありながら幼馴染ひとすじ、という主人公が、
自分の半身のように思っていた幼馴染を交通事故によって植物状態にされたことで病みます。

しかしこの作品は、
ガールフレンドが植物状態になっちゃってかわいそう!みたいな安っぽい悲劇ではありません。

理不尽な目に遭ったとき、世界を呪いたくなる気持ちにどうやって折り合いをつければいいのか。
それは「呪いを祈りに変えること」であろう、と言っているのです。

タンスのカドに足の小指をぶつけたからといって、タンスにやつあたりする意味はありません。
突然の土砂降りで駅に足止めをくらったら、苛立たず雨がやむのを待ちましょう。

怒りや憎しみが先に立つのは人間なら当然ですが、どこかであきらめないと
世界を呪い続けるぶんだけ、心のエネルギーが無駄になるばかりです。
どうにもならないことは呪おうが祈ろうがどうにもなりませんけど、
世界を呪って病むよりは、祈るほうが前向きですよね。