第10章: 新たな一歩

 春、桜の花びらが舞う中、久美子と舞は手を取り合って歩いていた。大学の桜並木は満開を迎え、その下を歩く二人の姿は絵画のように美しかった。


 久美子は大学を去る決断をし、舞は卒業後の進路を決めていた。二人は多くの障害を乗り越え、お互いを選び取った。その過程で、周囲の理解を得ることの困難さも痛感した。しかし、二人の絆はそれによってさらに強くなったように思えた。


 桜吹雪の中、舞が久美子に向き直る。


「先生……いえ、久美子」


 舞が初めて久美子の名を呼んだ。その瞬間、久美子の胸に温かいものが広がった。


「私たちの物語は、ここからが始まりですね」


 久美子は優しく微笑む。花びらが二人の間を舞う。


「そうね、舞。これからも一緒に歩んでいきましょう」


 二人の前には、未知の未来が広がっている。それは困難も喜びも含んだ、新たな冒険の始まりだった。


 久美子は空を見上げた。透き通るような青空の下、桜の枝々が風に揺れている。その光景は、まるで二人の未来を祝福しているかのようだった。


「舞、私たちの道のりはまだ始まったばかり。でも、あなたと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がするわ」


 舞は久美子の手をぎゅっと握り締めた。


「私も同じです。久美子さんと一緒なら、何でも怖くありません」


 二人はゆっくりと歩を進めていく。その姿は、まるで一羽の蝶が羽ばたくかのようだった。過去の痛みを乗り越え、新たな未来へと飛び立つ蝶。


 桜並木の向こうには、広大なキャンパスが広がっている。そこには、二人がこれから歩む人生の象徴のようにも見えた。未知の可能性に満ちた、広大な世界。


 久美子と舞は、その世界に向かって一歩を踏み出した。春の風が二人の髪を優しく撫で、桜の花びらが舞い散る中、新たな章が始まろうとしていた。


(了)

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【百合小説】二つの蝶 〜禁断の愛の行方〜 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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