第9章: 決断

 冬の寒さが身に染みる中、久美子は海辺に立っていた。灰色の空の下、荒れる波が岸辺を打ち付ける。彼女の心も、この海のように激しく揺れ動いていた。


 波の音を聞きながら、久美子は自分の人生を振り返る。蝶子との別れ、長年の孤独、そして舞との出会い。全てが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。


「私は逃げてはいけない」


 久美子は心に誓った。冷たい海風が頬を撫でる。それは、彼女の決意を後押しするかのようだった。


 同時に、舞も自分の気持ちと向き合っていた。真紀との再会で過去の記憶が蘇ったが、それは久美子への想いの強さを再確認させるものだった。舞は公園のベンチに座り、落ち葉を踏みしめながら考え続けた。


 雪の降る夜、二人は大学の中庭で再会した。銀世界に包まれたキャンパスは、静寂に包まれていた。互いの息が白く凍る中、久美子が口を開いた。


「舞、私はあなたと共に歩んでいきたい」


 舞の目に涙が浮かんだ。


「先生……私も同じです。でも、私たちの関係は……」

「私は教授の職を辞することにしたわ」


 久美子の言葉に、舞は驚いた表情を浮かべる。


「でも、先生の研究は……」

「あなたとの未来の方が大切だと気づいたの」


 舞は言葉を失った。雪が二人の肩に積もっていく。


「私たちの関係には、まだ多くの困難があるでしょう。でも、一緒に乗り越えていきたい」


 久美子の言葉に、舞はゆっくりと頷いた。


「私も、先生と一緒に歩んでいきたいです」


 研究室の薄暗がりの中、久美子と舞の吐息が白く浮かぶ。窓の外では雪が静かに降り続け、街灯の柔らかな光が二人を優しく包み込んでいる。


 久美子は舞の顔を両手で包み込み、その瞳を覗き込んだ。舞の目は、熱に浮かされたように潤んでいる。久美子の指が舞の頬を撫でると、その肌の滑らかさに思わずため息がもれた。


 舞は久美子の首筋に顔をうずめ、その香りを深く吸い込んだ。洗いたてのシャツの清潔な香りと、久美子特有の甘い香りが混ざり合っている。舞の唇が久美子の首筋を這うように移動し、鎖骨に辿り着く。


 久美子は舞の髪に指を絡ませ、その感触を確かめるように優しく撫でた。舞の髪は絹のように滑らかで、指を通すたびに心地よい感覚が久美子の体を駆け巡る。


 二人の唇が重なり合う。最初は優しく、そして次第に激しさを増していく。舌と舌が絡み合い、互いの味を堪能する。久美子は舞の唇の柔らかさと、かすかに残る紅茶の香りを感じた。


 舞の手が久美子の背中を這うように移動し、ブラウスのボタンに辿り着く。一つ、また一つとボタンが外れていく音が、静寂の中で妙に鮮明に響く。


 久美子は舞のセーターの裾に手をかけ、ゆっくりと上へたぐり寄せた。舞の肌が露わになるにつれ、久美子の指先がその滑らかさを確かめるように這う。舞の体が小刻みに震え、その反応に久美子は昂ぶりを感じた。


 二人の体が重なり合い、互いの温もりを確かめ合う。肌と肌が触れ合うたびに、電気が走るような快感が全身を駆け巡る。久美子は舞の体の柔らかさと、その温もりに酔いしれた。


 研究室の静寂を破るように、久美子の柔らかな吐息が漏れる。舞の指先が久美子の敏感な箇所に触れた瞬間、久美子の体は小刻みに震えた。その反応に、舞の瞳に熱が灯る。


 久美子は舞の顔を見つめる。舞の頬は薔薇色に染まり、唇が微かに開いている。その表情に、久美子は心臓が早鐘を打つのを感じた。


 舞は久美子の反応に導かれるように、優しくゆっくりと動きを続ける。久美子の吐息が次第に熱を帯びていく。その声に応えるように、舞の動きにも熱が籠もっていく。


 久美子の手が舞の背中を撫で、その滑らかな肌の感触を堪能する。舞の体温が久美子の掌を通して全身に広がっていくようだった。


 二人の呼吸が徐々に荒くなり、互いの鼓動が重なり合う。久美子は舞の耳元で囁く。


「舞……」


 その声に、舞の動きが一瞬止まる。そして、より深く、より熱く、久美子を求めるように動き始める。


 久美子の指が舞の髪に絡まり、その柔らかさを感じる。舞の吐息が久美子の首筋にかかり、その温もりが全身を駆け巡る。


 二人の体が重なり合い、互いの温もりを確かめ合う。肌と肌が触れ合うたびに、電気が走るような快感が全身を駆け巡る。


 やがて、二人は同時に波が押し寄せるような感覚に包まれた。その瞬間、二人の視線が絡み合い、言葉なしで深い愛情を交わす。


 静寂が戻った研究室に、二人の寄り添う姿が浮かび上がる。窓の外では雪が静かに降り続け、二人の熱い吐息が白い靄となって立ち昇っていた。


 二人の吐息が重なり、やがて熱い吐息へと変わっていく。互いの名を呼び合う声が、研究室に満ちていく。長い別離を経て、二人の心と体が再び一つになった瞬間、二人は同時に絶頂を迎えた。


 窓の外では雪が静かに降り続け、二人の熱い吐息が白い靄となって立ち昇っていた。


 翌朝、二人は研究室の窓から昇る朝日を眺めていた。新しい一日の始まり。そして、二人の新たな人生の幕開けでもあった。

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