第35話 溺愛・熱い想いを伝え合うわたしたち

 オーギュドステファ殿下は、


「短いような長いような三十年だったというところだね。この間、昼は仕事に集中していた。そして、夜、寝る前になるといつもお前のことのみを思っていた。お前がいないことによるつらさはいつも我慢していたんだよ。しかし。さすがのわたしも、たまにではあったのだが、お前がいないつらさを我慢できなくなる時はあった。でも、その度に来世で再会することを願っていたんだ」


「わたしが長生きできなかった為、オーギュドステファ殿下にはつらい思いをさせて

 しまいました」


 わたしがそう言ったのに対し、オーギュドステファ殿下は、


「気にしなくていいよ。もう過ぎた話なんだから。とにかくこれからだよ、これから」


 と言いながらやさしく手を振った。


「オーギュドステファ殿下……」


 わたしはそのオーギュドステファ殿下のやさしさに心がますます熱くなってくる。


 すると、オーギュドステファ殿下は、


「もう一つ聞きたいことがあるようだね。遠慮しなくていいよ」


 と言ってきた。


 わたしは、


「お気づかい、ありがとうございます」


 と言った後、


「オーギュドステファ殿下はいつ頃から前世のことを思い出したのでしょうか?」


 と言った。


「そうだな、思春期に入った頃だったと思う。それ以降は、『前世のお前と今世で再会し結婚したい』とずっと思ってきたんだ。女性に声をかけて、前世のお前かどうかを確認してきたので、いつの間にか、『女性に声をかけまくるオーギュドステファ殿下』という悪評に覆われるようになってしまった。まあ、これは仕方がない。悪評を気にして、声をかけ続けていなければ、お前と出会っていた可能性はかなり低くなっていたと思う。ただ、お前と再会するまでは、たまに、『いつになったら再会できるんだろう?』と思ってつらい気持ちになったこともあったんだよ」


「前世だけではなく、今世でもお待たせしてしまったのですね」


「まあ、でもそのことも気にすることはないよ。こうして再会できたのだから、過ぎたことは、もうどうでもいいと思っているんだ」


「でも、オーギュドステファ殿下は、前世でわたしがこの世を去った後、三十年ほども独身を貫き、今世でもわたしと再会するまでつらい思いをさせてしまいました。申し訳ない気持ちで一杯でございます」


「ありがとう。わたしはお前の持っている心からのやさしさが大好きなんだ」


「オーギュドステファ殿下……」


 オーギュドステファ殿下は心を整えた後、


「ルデナティーヌよ、今のお前もわたしのことを好きになってくれたよな」


 と言った。


「もちろんでございます。最初は強引で傲慢な態度を取っていたので、正直いって少し嫌な気持ちになっていましたが、それは、オーギュドステファ殿下の表面のところしか見ていなかった段階のことでございます。前世の結婚の約束のことを思い出し、オーギュドステファ殿下の心のやさしさを認識した今では、オーギュドステファ殿下のことが好きで大好きなのでございます」


 わたしは恥ずかしさに耐えながらそう言った。


 すると、オーギュドステファ殿下は


「わたしもお前が大好きだ。わたしと婚約し、結婚してくれ!」


 と熱を込めて言った。


 婚約、結婚……。


 前世からのオーギュドステファ殿下への熱い想いがさらに湧き出してくる。


「もちろんでございます。おそれ多いことではございますが、オーギュドステファ殿下との婚約、結婚を受け入れたいと思います。よろしくお願いいたします」


 わたしはうれしさで涙をこぼしながらそう言った後、頭を下げた。


「ルデナティーヌよ、よく言ってくれた。正式な婚約式は別途行うが、今日からお前はわたしの婚約者だ。よろしく頼む」


 オーギュドステファ殿下はそう言った後、頭を下げた。


 そして、オーギュドステファ殿下は、頭を上げると、


「これからのわたしは前世と同じく、周囲の人たちに対して。強引で傲慢な態度をとることはなく、気品を持った心やさしい態度で接していくことにする。わたしはお前のような素敵な人になるんだ」


 と言った。


 わたし涙を拭くと、


「それがよろしいと思います」


 と応えた。


 オーギュドステファ殿下がこうした態度に変化していくことにより、前世と同じように、国王の後継者の座を確定していくことができるのでは、と思っていた。


「そして、お前と一緒にこの王国をより良いところにしていく」


「はい。オーギュドステファ殿下と一緒にこの王国を良いところにして行きたいです」


「わたしはお前が好きだ。大好きだ、愛してる! お前のことをわたしは一生思い続ける。そして、わたしはルデナティーヌ、お前を絶対に幸せにする!」


 オーギュドステファ殿下はそう力強く言った。


 それと同時に、オーギュドステファ殿下の熱い想いがわたしの心の中に流れ込んできた。


 わたしの心は沸騰していく。


 そして、わたしはオーギュドステファ殿下に対し、


「オーギュドステファ殿下、そう言っていただいてうれしいです。わたしもオーギュドステファ殿下のことが好きで、大好きで、愛してます。これから一生、オーギュドステファ殿下のことを思い続けていきます。オーギュドステファ殿下、一緒に幸せになっていきましょう」


 と力強く言い、そして、熱い想いを伝えていくのだった。

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婚約破棄されたわたしは、新たな人生を始めていく。婚約破棄した方はみじめな状態。そして、わたしは強引で傲慢な態度をとる殿下に溺愛されていく。 のんびりとゆっくり @yukkuritononbiri

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