第4話 後輩からのエロ助言

 さて、彼女と自然消滅した頃、私の職場に、ある後輩が配属されてきた。この私より8歳程、年下だった。



 その後輩を迎えての歓迎会か何かで、酒が入った事もあり、その後輩がかって汽車の中で、私らの住んでいる市の駅から県庁所在地の駅まで、自分の通う大学へ行く時に乗る汽車の中で、生足のスラリとしたもの凄い美人がいた事を、自慢げに話をした。



 そこで、その彼女と、私は、かって4年間も付き合っていたと言ったのだが、全く、信用しようとしないのだ。



 そこで、彼女の名前、生年月日、住所、そして何よりも、彼女の最大の特徴である、スラリとした真っ白な生足の話をした。



 そう、彼女は、この北陸の地で、寒い冬の日で雪が降っていても、膝頭までのミニスカートを履き、寒さ防止のために革製のロングブーツを履いていた。

 その季節中、そう言う服装をする女性は、まず、彼女以外いなかったかのだ。



「それで、それで、先輩は、その彼女と、一体、何処までの関係になったのです?」と後輩が、興味津々で聞いてくる。



「イヤ、全く、何も無かった。そう言えば、手も握った記憶すら無いなあ……」



「でも、お互いにお見合いで、両親は公認だったんだから、ラブホにでも連れ込めば良かったんじゃ」



「あんたは、そうは言うけれど、普通の女性ならともかく、あれほどの美人になると、アレが起つかどうか自信が無かったんだと、今になって、そう思んだよ。

 何しろ、大学時代は勉強しかして来なかった、超真面目人間だったからねえ」



 しかし、この後輩は、学生時代から、遊び回っていたと言うので有名だったのだ。自称10人切りである。



「イヤ、先輩はそう言われるけど、出来るか出来ないかは、ホテルに入って、実際に、してみなければ分からないじゃ無いですか?



 仮にですよ、万一、アレが全く起たなくても、一緒にバスタブに入って、あの白磁のような真っ白い肌や、多分、ピンク色であろうアソコを見るだけでも良かったのに。



 ああ、何と、勿体無い事を……。ホントに勿体無い。勿体無い。勿体無い。



 もし、この僕だったら、高級ホテルに誘って、まず高級な料理を食べます。ムード作りから、スタートするのですよ。



 で、次に、先輩と相手の女性と、一緒にお酒を飲みます。



 お酒を飲めば、お互いに、理性のタガがハズレます。

 ここが、実は狙い目で、お酒で酔いが回って来た後に、少し温めのバスタブに連れ込み、あの白磁のような身体、そう、あの「魅惑的な身体」を、ジックリ見ておくのです。

 シッカリと、先輩の目に焼き付けておくのですよ。



 そして、ベッドに連れ込み、ここからが重要な所ですが、彼女の、全身を舐めて舐めて舐め回していれば、いずれ、本能的にオートマチックに、アレが起って来る筈。

 特に、大事な大事な彼女のアソコを中心的に、舐め回せば良かったのです。



 で、うまく、起てば、そのまま、無理矢理入れてしまう。

 中で出てしまって子供ができても、「できちゃった婚」にできるしねえ……。

 だから、ゴム等を付けなくても、いいんですよ。

 どうせ、「両親公認」だったんでしょうが。



 仮に、それでも失敗したならば、次の日の朝、「朝立ち」を利用して、再度、挑戦してみるのですよ。

 朝は、堅いですからね……。



 万一それも出来なかった時は、夕べは、少々飲み過ぎたなあ……と、頭を搔けば済む話でしょう、どうでしょうか?」



 確かに、この後輩の言っている意味も、理解出来ない事も無い。確かに、今となれば、その手があったかと、心底、思った程である。



 だが、超奥手の私には、当時そのような、後輩の考えは、全く思い付かなかったのである。



 私は、それ程、真面目な人間だったのだ。



◆   ◆   ◆



 やがて、あっという間に数十年が過ぎた。既に、定年後、一年程、経った頃の時である。



 私は、急に無性に、彼女に会いたくなった。



 かって、彼女に手も足も出なかったものの、この歳になると、もはや懐かしい思い出でしか残っていないのである。



 彼女の嫁ぎ先は風の便りで聞いていたので、実は、カーナビを使って彼女の嫁ぎ先へ下見に行った事があったのである。

 ここまでは、ハッキリ書いて来なかったが、浄土真宗が主なこの北陸の地では、特に皆から蛇蝎のように嫌われる、某新興宗教に、彼女の一家全員が入っていたのだった。



 だから、ある意味、彼女の結婚相手は、実は、非常に限定されるのだ。



 彼女は、結局、某接骨院に嫁いだのだが、私が、カーナビを便りに行ってみたところ、何と、その接骨院には、駐車場が全く無いのである。

 その接骨院のある町内自体も、長屋の連なる、貧民街一歩手前のような、小汚い町であった。

 これでは、近所のオジサンやオバサンしか、お客が来ないでは無いか!

 それもあってだろう、その接骨院は、既に「閉院」となっていたのだ。

 この嫁ぎ先を見て、彼女が、非常に貧乏しているのが、理解できたのである。

 あれだけの美人でありながら、「玉の輿」には、結局乗れなかったのだ。



 しかし、私と結婚したとすれば、彼女は、では一体、あの宗教上の問題を、どうするつもりであったのだろうか?



 これは、あくまで私の推測なのだが、夫婦別の宗教で、手を打つ覚悟であった事は、間違いが無いのだ。



 以上の事を全て踏まえ、今から5・6年程前に、高齢の母が猛反対するのも聞かず、彼女に直接、電話をする事にしてみた。



 もう一度だけだが、彼女に会いたかった。そして、どうして、あの時、手が出なかったのか、あるいは、結婚できなかったのか、それをキチンと告げて謝りたかったのだ……。



 そして運良く彼女と出会えれば、かって出来なかった、あの行為も、土下座してでも頼み込んで、再挑戦してみようとの企みも、実は下心にあったのである。



 しかし、一杯飲んで、勇気を振り起こして、自宅から電話をしたものの、

「立花なんて、全く、知りません」と、電話を、目一杯の力で、叩き切られた。



 ガッシャーン!!!



 彼女は、今でも、猛烈に怒っているに、違いが無かったのだ。



 何しろ、女性としての全盛時代の4年間(満20歳から満24歳まで)を、全く、無為に過ごさせたのは、この私の意気地無しが最大の原因だったからだ。

 彼女は、私にやらせる気持ち、つまりアレを入れさせる気持ちが、十分にあったのは、間違いが無かったのだろう。

 だから、高校一年生の時の、男性経験をも、自ら、白状したのだろう。



 つまり、この私が、4年間一切、手を出さなかった事を、ただただ、責めていたのだろう。



 こうして、私の人生最高の美人との、全ての思い出は、記憶の彼方に、あっと言う間に、一瞬で消えて行ってしまったのである。

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短編:私は、彼女が、好きだった!!! 立花 優 @ivchan1202

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