[総ルビ]異世界転生スラム街からの成り上がり ～採取や猟をしてご飯食べてスローライフするんだ～(web版)

４１．防具

■４１．防具（ぼうぐ）

　さて今度（こんど）こそ防具（ぼうぐ）を買（か）おう。

　ずっと考（かんが）えてはいたのだ。

　くそ安（やす）い布（ぬの）の服（ふく）だけでは防御力（ぼうぎょりょく）が圧倒的（あっとうてき）に低（ひく）い。

　特（とく）に胸（むね）などを強打（きょうだ）すれば致命傷（ちめいしょう）にもなる。

　腕（うで）をかすったくらいなら平気（へいき）だが、胴体（どうたい）や頭（あたま）は急所（きゅうしょ）だ。

　防具（ぼうぐ）は欲（ほ）しい。

　靴（くつ）も安（やす）い革靴（かわぐつ）なのだが、安（やす）い革（かわ）は履（は）き心地（ごこち）が悪（わる）い代（か）わりに硬（かた）くて防御力（ぼうぎょりょく）自体（じたい）は高（たか）い。

「胸当（むなあ）てだよな、やっぱり」

「うにゃ」

「そうですね」

　ミーニャもラニアもまだ胸（むね）とは言（い）えないアレなので、俺（おれ）と同（おな）じやつで。

「子供（こども）用（よう）の胸当（むなあ）て3つください。最低限（さいていげん）、実戦的（じっせんてき）な防御力（ぼうぎょりょく）のあるやつを」

「あ、はい。貴族（きぞく）用（よう）の装飾（そうしょく）品（ひん）の多（おお）いイミテーションとかでないのですね」

「そそ」

　そうなのだ。

　軽（かる）く作（つく）ってあって装飾（そうしょく）品（ひん）が多（おお）いが防御力（ぼうぎょりょく）は低（ひく）い貴族（きぞく）用（よう）がある。

　バカげていると思（おも）うが、世（よ）の中（なか）はそんなものだ。

　ちなみに高位（こうい）貴族（きぞく）は防御力（ぼうぎょりょく）もあって装飾（そうしょく）品（ひん）もあるめちゃくちゃ高（たか）い防具（ぼうぐ）をつけている。

　だいたいそういうのは特注（とくちゅう）なので中古（ちゅうこ）以外（いがい）は売（う）ってはいない。

　こうしてみんなで胸当（むなあ）てを装備（そうび）する。

　うむ。

　全体的（ぜんたいてき）には革製（かわせい）なのだが薄（うす）い鉄板（てっぱん）も仕込（しこ）んであって、軽（かる）いわりには強（つよ）い。

　防御力（ぼうぎょりょく）と動（うご）きやすさを両方（りょうほう）考慮（こうりょ）した実戦（じっせん）向（む）きのものだ。

　これ以外（いがい）にはもう少（すこ）し軽（かる）い革（かわ）だけのもの、さっき言（い）ったイミテーションの軽（かる）くて装飾（そうしょく）品（ひん）が多（おお）いものがあるようだ。

　実質（じっしつ）選択肢（せんたくし）はこれしかない。

「じゃあこれください」

「はい、お買（か）い上（あ）げありがとうございます」

　まあ値段（ねだん）は金貨（きんか）一枚（いちまい）とちょっとというところだ。

　まだお財布（さいふ）には若干（じゃっかん）の余裕（よゆう）もある。

　武器（ぶき）と防具（ぼうぐ）を装備（そうび）した俺（おれ）たちは、一丁前（いっちょうまえ）に成（な）りたて冒険者（ぼうけんしゃ）という感（かん）じに見（み）えるようになった。

　もうスラムのガキンチョにはさすがに見（み）えない。

　ちょっと趣味（しゅみ）というか興味（きょうみ）本位（ほんい）で盾（たて）コーナーを見物（けんぶつ）する。

「この辺（へん）が盾（たて）です」

「ありがとう」

　売店（ばいてん）のお姉（ねえ）さんは今日（きょう）も笑顔（えがお）で教（おし）えてくれる。

　この人（ひと）はかなり好（こう）印象（いんしょう）だ。

　最初（さいしょ）から俺（おれ）たちを客（きゃく）として見（み）てくれたし、接客（せっきゃく）態度（たいど）も非常（ひじょう）にいい。

　無駄（むだ）に硬（かた）くもないし、的確（てきかく）だ。

　ラウンドシールド、カイトシールド、ウッドシールドなどが並（なら）んでいる。

　その威容（いよう）は圧巻（あっかん）だけれど、俺（おれ）が持（も）つには大（おお）きいものが多（おお）い。

　バックラーもある。バックラーは小型（こがた）の丸（まる）盾（だて）で全面（ぜんめん）が金属（きんぞく）製（せい）だ。

　ラウンドシールドも丸（まる）盾（だて）という意味（いみ）だけど、こっちは木製（もくせい）で縁（えん）と中心（ちゅうしん）部分（ぶぶん）だけ金属（きんぞく）で補強（ほきょう）してある。

　お金（かね）は結構（けっこう）ある。

　ラウンドシールドの中（なか）でも一番（いちばん）小（ちい）さいのは、思（おも）ったより安（やす）い。

「なあみんな、この小型（こがた）盾（だて）、買（か）ってもいい？」

「え、そりゃあエドが欲（ほ）しいっていうなら買（か）えば？」

「はい。私（わたし）も買（か）っていいと思（おも）いますよ」

　ということで両者（りょうしゃ）の了解（りょうかい）を得（え）たので、買（か）ってしまおう。

　ははは、剣（けん）と盾（たて）を持（も）つ、さながら剣士（けんし）もしくはナイトの出来上（できあ）がりだ。

　盾（たて）と剣（けん）を構（かま）えてポーズをとる。

「おおぉ、すごいエド、騎士（きし）様（さま）みたい！　かっこいい」

「エド君（くん）、うんうん、かっこいいよ」

　なんだか二人（ふたり）がいつもよりお熱（ねつ）で、俺（おれ）をべた褒（ぼ）めしてくれる。

　なんか俺（おれ）って実（じつ）はすごいんでは、と錯覚（さっかく）してしまいそうだ。

　見（み）てくれだけなのは、もちろん理解（りかい）している。

　増長（ぞうちょう）するつもりはない。

「えへへ、まあ、俺（おれ）ならこんなもんさ」

「きゃっきゃ、エドっ」

「うふふ。エド君（くん）ったら」

　お店（みせ）のお姉（ねえ）さんも暖（あたた）かい視線（しせん）で見守（みまも）ってくれている。

　子供（こども）相手（あいて）にくそ真面目（まじめ）な小言（こごと）とか言（い）ってこない、いい店員（てんいん）だ。

　これでゴブリンの棍棒（こんぼう）を受（う）け止（と）めるくらいはできるだろう。

　後（あと）はあまり思（おも）いつかないが、怖（こわ）いのはオオカミだろうか。

　あれを剣（けん）だけで受（う）け止（と）めるのは難（むずか）しい。

　やっぱり盾（たて）もあると安心感（あんしんかん）は桁違（けたちが）いだった。

　俺（おれ）が前衛（ぜんえい）でみんなを毒牙（どくが）から守（まも）る……おぉ、なんかかっこいい。

　一応（いちおう）、これでも半分（はんぶん）は本気（ほんき）だ。

　ミーニャとラニアを傷（きず）物（もの）にするなんて、俺（おれ）のプライドにかけても許（ゆる）せないからな。

「盾（たて）ならファイアボールくらいなら防（ふせ）げますね」

「おおぉ」

「特段（とくだん）、魔法（まほう）付与（ふよ）などはありませんが、ないよりは防御力（ぼうぎょりょく）は格段（かくだん）に高（たか）くなります」

「なるほど」

「ではお買（か）い上（あ）げでよろしいですか」

「はいっ、よろしく」

　こうして支払（しはら）いをする。金貨（きんか）一枚（いちまい）がまた手元（てもと）から消（き）えていく。

　お釣（つ）りは貰（もら）ったけど、金貨（きんか）が減（へ）っていくのは泣（な）ける。

「さて、たまには食（た）べてくか？」

「え、いいの？」

「あ、うん」

「ごちそうさまです」

　俺（おれ）たちは売店（ばいてん）の反対（はんたい）側（がわ）へ向（む）かう。

　クエストカウンターの向（む）こうにはいわゆる酒場（さかば）がある。

　異世界（いせかい）ファンタジーではお馴染（なじ）みだが、今（いま）まで利用（りよう）したことはない。

　隅（すみ）のほうの四角（しかく）いテーブルの所（ところ）の椅子（いす）に座（すわ）る。

　4人（にん）席（せき）なので対面（たいめん）側（がわ）にミーニャとラニアが並（なら）んで座（すわ）った。

　あ、ここどうやって注文（ちゅうもん）するんだ。

　そわそわ見（み）ていたら、ウェイトレスの格好（かっこう）のお姉（ねえ）さんがこちらに向（む）かってくる。

　おっぱいが大（おお）きい。それを強調（きょうちょう）するようなメイド服（ふく）みたいな制服（せいふく）を着（き）ているのだ。

　頭（あたま）にはホワイトブリム。

　うむ、こういうのもなかなか、どうして。

　コスプレじゃなくて本職（ほんしょく）なのもポイント高（たか）い。

「ご注文（ちゅうもん）はお決（き）まりですか？」

「えっと、あ、んー。何（なに）にする？」

「ニワトリの唐揚（からあ）げ定食（ていしょく）！」

「あぁ、じゃあ俺（おれ）もそれ」

「私（わたし）もそれにします」

　ミーニャ、エッグバードを見（み）てからずっと唐揚（からあ）げ食（た）べたがっていたもんな。

　ニワトリの唐揚（からあ）げはうちでは食（た）べられないので、買（か）うほかない。

「唐揚（からあ）げ定食（ていしょく）、3つですね。ちょっと待（ま）っててね、うふふ」

　お姉（ねえ）さんがウィンクして去（さ）っていく。

　その流（なが）し目（め）がセクシーでビクッとしてしまう。

「むぅ」

「もぅ」

　なぜかミーニャとラニアの視線（しせん）が俺（おれ）に突（つ）き刺（さ）さっていた。

　これは何（なに）かを非難（ひなん）している目（め）だ。

　俺（おれ）、何（なに）かしたっけ。

　メイドさんを目（め）で追（お）っていたくらいしかしていないと思（おも）うが。

　メイド服（ふく）だぜメイド服（ふく）。

　それにあのおっぱい。見（み）ないわけないじゃん。

「ぶぅ」

「んっもぅ」

　ご機嫌（きげん）斜（なな）めだ。

　女（おんな）の子（こ）の機嫌（きげん）なんて、秋（あき）の空（そら）と同（おな）じくらい意味（いみ）がわからない。