三作品目・転福為禍のインヴォーカー ~「嫌いだから一緒に旅はできない」と言われた俺と、言ったボク~

【タイトル】転福為禍のインヴォーカー ~「嫌いだから一緒に旅はできない」と言われた俺と、言ったボク~


【キャッチコピー】親友との、出会いと別れの物語


【作者】三鞘ボルコム

【URL】 https://kakuyomu.jp/works/16817330669307554527


【あらすじ】 冒険者として仲間と共に旅をしていたユーキは、仲間の1人であり10年来の親友でもあるアレクから突然別れを告げられる。ユーキは突然のことに反発するが、別れの原因はアレクがユーキのことを「嫌い」だからと言う。当然、納得するわけがない……、と思いきや、ユーキはすんなりと受け入れる。予想とは違う反応に戸惑うアレクだったが、達観したユーキのおかげで揉めることもなく2人の別れは決定してしまう。最後の別れを告げ、去るアレクの瞳には大粒の涙が浮かんでいた。

 アレクはなぜ、別れを告げたのか?ユーキはなぜ、すんなりと受け入れたのか?2人はなぜ、旅に出たのか?そして、2人の今後は?

 10年前、アレクとユーキの出会った日から物語は始まる———。



※注意

 本作はテーマの1つとして追放ものに近い構成をとっておりますが、復讐・ざまあ要素はありません。また、チート無双・ハーレム要素も(たぶん)ありませんので、ご理解の上でご一読ください。


【拝読したところまでのストーリー展開】

 プロローグでアレクとユーキの決別を描いた後、10年ほど前に遡り、アレクとユーキの出会いを書く、といった感じですかね。

 聖暦1356年。6歳になったアレクは妹のミーアと喧嘩し、両親への反発もあって家を飛び出してしまいます。飛び出した先の屋台の男性に、愛娘の見守りを頼まれて向かった公園には、いじめに遭っている少女・クララを発見。勇敢にいじめっ子達に立ち向かうアレクだったが、多勢に無勢で窮地に立たされるアレク。

 玉砕覚悟でぶつかろうと考えたアレクの元に、引っ越しのために街へやって来た少年・ユーキが参戦する……というのが、物語の最序盤を飾ります。


【世界観描写解説】

 『聖暦1356年』をそのまま西暦に落とし込めそうな感じがします。聖女や教会学校というワードや、交通手段に馬車を用いていることから、宗教が大きな力を持っていた時代だと見えます。作中の本のタイトルに『間違えない化粧品の選び方』とあり、それが多少引っかかりましたが、化粧品の歴史を調べてみると、14世紀ごろには『コスメ』の原型となる同業者組合サン=コームがフランスに誕生していたそうで。

 ただ、時代的に女性をターゲットとした本を、ましてや普及率も少ないであろうコスメについての本を出版できるのかということを考えれば素通りできるポイントではなく、かといってツッコミを入れるポイントでもなさそうです。

 また、作中にはドワーフ、エルフ、魔族といった異人種が存在します。加えて、妖精の存在も明らかにされています。それぞれ固有の国家を形成している様子が見受けられ、人種の相違による諍いもあったようです。

【キャラクター解説】

 アレク

 6歳・未就学児~小学生相当の男児です。幼いが故の純粋さ・無鉄砲さ・正義感はありますが、6歳にしては察しがいいような一面も見えます。本が好きだからでしょうか。本に関連して、英雄譚に憧れる一面があります。正義感が強いのはそれが理由の一つでしょう。ですが、本文上からは『正義感が強い』程度しか感じられず、英雄譚の表面上しか理解できていないように感じます。


 ユーキ

 8歳の男児です。しかし物語最序盤では状況を俯瞰して見る思考力があり、その後アレクに嫉妬心を覚えるという8歳らしからぬ情緒があるように感じます。その嫉妬心を自覚して押さえ込もうとしている内情が見られることからも、さらに年齢より上の精神を持っているように思いました。


【タイトル・キャッチコピー・あらすじの批評】

 タイトルから、この物語では何が行われるのかいまいち読み取ることが出来ませんでした。インヴォーカーとはなんだろう? と思って調べてみたところ、おそらく英語で「祈る」「救いを求めて呼びかける」を意味する『invoke』から来ているのではないかと推測。しかし、日本語圏ではまずこの単語を使う場面が少なく、weblio英和辞典によると学習レベルは大学院以上、または英検1級以上相当の単語のようで、なおさら一般の人が目にする単語ではないでしょう。そのような単語を、「あぁ、invokeね」と理解できる人が読者に何人いるのでしょうか?

 「祈り」という言葉を含ませたいならprayがより一般的な単語にあたるのでしょうが、『転福災禍のプレイヤー』……うーん、すこしかっこ悪いですね。

 あらすじ、キャッチコピーもタイトルほどではないですが何が行われるのか読み取りにくいです。


【世界観の批評】

 特にひっかかる点はありませんでした。教会が無償教育を施せるほど力を持っているなら、その土地の領主や王族が教会からの進言を受けて社会保障制度ぐらい最低限は整えそうですが、『強いて言うなら』の範疇ですのでそんなに気にしなくても良さそうです。


【キャラクターの批評】


全体的に精神年齢が高いように思います。アレク君はもう少し聞き分けが悪かったりワガママ言う子でもよかったのではと思います。歳と精神年齢の乖離に驚いたのはユーキ君のほうで、たったアレクと二歳違いでここまで大人ぶった考え方、はたしてできるのだろうかと疑問に思いました。二、三歳ずつ年齢が上がっても問題なく読み進められた気がします。

【まとめ】


 文章に不安要素は見られなかったです。別作品で批評をされているだけあって、頓珍漢な言動をする登場人物は見られず安心して読み進められました。(別の小説を持ち込むのは批評という立場上よくないと思いつつも……)

 しかし、『親友との出会いと別れの物語』とありますが、出会いのパートの部分が長すぎます。旅の部分を読みたい読者が一番多いはずなのに、そこを見る為に幼少からの細々した日常パートを越えなければならないのは読者に少々厳しい思いをさせていると思います。

魅せ方さえ工夫すれば何倍にも輝く作品だと思いますので、執筆引き続き頑張ってください。

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