小学校時代の記憶が無い少年・櫂房令斗くんの住む町には、ポルターガイストのような現象が起きているらしい。
家の呼び鈴を鳴らしていく幽霊。令斗くんの友人・西宮海斗くんは「ぼーちゃんの家にも来るかも」と推測する。
帰宅した令斗くんの前に、呼び鈴を鳴らして現れたのは幽霊ではなく、(お茶目で可愛くもない幽霊ではない)自身を「鍵穴くん」と名乗る、喋る落書きだった。
令斗くんは彼との出会いをきっかけに、己と向き合い、己の正体を知っていく――というのが本作の概要です。
作中にちりばめられた伏線の回収の仕方が上手い。何故記憶が欠損しているのか、鍵穴くんはどういう存在、令斗くんに何を伝えたいのか。
それら真実の欠片をパズルのように集め、「鍵穴くん」という一つの作品になったときは感動しました。
鍵穴くんが出てこないシーンでも、中学生らしい会話と思考がきめ細やかに描写されており、リアリティをふんだんに詰め込んだ日常になっています。(鍵穴くんという非日常のスパイスを効かせる下地になっているのもgood)
ぜひご一読ください。