あがき
阿賀沢 周子
第1話
新聞や文庫本は裸眼で読めるけれど、最近フリガナが読みにくくなった。特に、薄暗いと数字などを取り違えることが多くなり、いよいよリーディンググラスの買い時かと憂鬱になっている。
まだ中年と呼ばれていない年齢のころ、2番目の兄から新聞の切り抜きが送られてきた。「老眼予防に良いようなので、やってみて」という。名は忘れたが、何とか博士の「毛様体筋トレーニング」の記事だった。兄は実旋していると言っていた。
目の前15㎝ほどの位置に指やペンを置き、遠くの山や雲、空などと、代わるがわる見て目の筋肉を鍛える。遠近体操法といい、近眼改善や眼精疲労にも効くらしい。
子育てのために休職し、専業主婦をしていたので、時間の自由はある。大きな期待はせず、節約になったらいいなと根を詰めずに続けたからか、老眼にはなりにくい目になっていた。
そもそもガーデニングが趣味なので、窓から庭を眺めることが多い。遠近体操法をしていたようなもので、眼には良かったようだ。
パンデミックにみまわれた三年余り、スマホに費やす時間や読書の時間が増えたせいで、毛様体筋の力が衰えたのだろうか。慌てて、真面目にトレーニングをしたら少し回復した気はするが。
兄はいまだに老眼になっていない。
インターネットで最新の眼の筋トレについて調べると、加齢により筋肉が固くなると元に戻せないとあった。年齢相応になったのか。
時の流れに抵抗したい自分がいる。まだ、眼鏡代を出費の予算には加えていない。
あがき 阿賀沢 周子 @asoh
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