第5話 本当のママ
緑色のカーペット。茶色いベッド。芝生の穴に埋められたイノシシ。山から降りてきたんだ。イノシシは畑を荒らす。だから駆除しないといけない。かわいそうだけど仕方がないんだ。
一階に降りて倉庫に行った。ガソリンを持ち出す。僕たちは一階のリビングや子供部屋にガソリンを撒いた。最後に玄関にもガソリンを撒いた。
「かわいそうだけど仕方がない。僕もこんな事をしたくないんだ。せめて火葬をしてあげよう」
僕はマッチを擦って投げた。するとガソリンに引火して一瞬で火が燃え広がった。燃えるというより爆発に近い。
「うわー」
僕とトウマは急いで家の外に飛び出た。木造の家はみるみる火が広がっていく。あっという間に家の半分くらいが炎に包まれている。
僕は家が燃えるのをただじっと見つめていた。
「偽ママから本当のママの居場所を聞けなかった。これからどうしよう」
「ハルト大丈夫だよ。本当のママがもうすぐ来るから」
「え? どういうこと?」
すると青い車がやってきた。見たことがある。あれは確かママのスポーツカーだ。運転席を見るとママが運転している。ママは窓を開けて手を振る。
「おーい。ハルトー。トウマー」
「ママだ! ママが呼んでる!」
僕とトウマは車に走って行った。
「ハルト。トウマ。さぁ後に乗った乗った。今から海に行くよ!」
「わぁー海だー」
そうだ。僕たちは海に行くんだ。この別荘から山を降りると海に出る。この青いスポーツカーで海に行くんだった。車はぐんぐん走っていく。外の景色はキラキラしている。
トウマが言った。
「どっちだクイズやろうよ」
お。いつものクイズのことだな。僕はママを後ろから目隠しをした。
「どーっちだ」
「えーっとどっちかなー。手が大きいからハルトかな」
「当たりー! やっぱり本物のママだ!」
車はぐんぐん走っていく。外の景色はキラキラしている。
【完】
最後までお読みいただき有難うございます。
【一応解説です】
以降ネタバレ注意です。
弟のトウマは幽霊です。周りの大人達は兄のハルトにしか話かけていません。交通事故はハルトのどっちだクイズが原因だったのです。
本書のテーマは良かれと思ってついたウソです。
相手は事実を知らないため矛盾することに疑いを持ち始めます。そして人間関係が壊れます。実は「良かれと思って」が悪なのです。私自身そのことが分かるのに時間がかかりました。所詮その場しのぎでありその代償がやってきます。
みなさんは上手くやっているでしょうか。
ママはニセモノ あめこうじ @amekoji
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