第4話 ニセモノを捕獲
「ママは偽物だ」
僕たちはそう決断した。
「偽物から本当のママの居場所を聞き出さないと」
家に戻り倉庫に行った。鼻くくりを持ち出す。鼻くくりはイノシシを捕まえる道具だ。ロープの先が輪っかになっていて、手や足などを入れると絞まるようになっている。
「明日の早朝に偽物を拘束しよう」
僕とトウマの決意は固い。その日は何事もなく過ごした。
次の日。朝五時に起きた。二階の寝室へ行く。ママは寝ている。そっと近づき鼻くくりを使って両足をベッドの下に固定した。次に片方の腕を固定した。
そこでママが目を覚ます。
「ううん。ハルト」
ママは寝ぼけている。すかさずもう片方の手もベッドに固定した。
「え? なにしてるの?」
「本当のママはどこ?」
「ちょっと何のこと?」
「すぐ解放されると思ってるんだ」
ママを置いて一階のリビングに行った。1リットルのジュースを飲み干す。外はもう明るい。気持ちのいい朝だ。以前もここで早起きしてどこかに出かけたような気がする。
しばらくして二階へ戻る。ママはジタバタしている。鼻くくりは一度締まると簡単には抜け出せない。
「ちょっとハルト。外しなさい」
「本当ママはどこ? 言うまで絶対外さないから」
ママは落ち着いた声で言った。
「ハルト。聞いて。事故は仕方がなかったの。ハルトは悪くないのよ。誰も悪くないの」
「なぜトウマを無視するんだ」
「トウマは交通事故で死んだの。車の事故で。トウマはもういないのよ」
僕は偽ママの鼻のガーゼを剥がした。鼻は曲がっていた。やはり偽ママはイノシシの罠にかかったんだ。
「ママは交通事故で一年入院してたの。喉に穴を開けて呼吸をしてたのよ。顔の怪我がひどくて整形手術をしたの。最後に鼻を治してるの。だいぶ印象が変わっているけど本物のママよ。ママも大変だったの」
偽ママはさんざん畑を荒らして捕まったんだ。そうに違いない。
「ハルトは悪くないのよ。トウマもハルトが悪いなんて思ってないから。誰もハルトを恨んだりしてないから」
今は隣の山本さんが食料を与えてるから偽ママは大人しくしてるが、また畑を荒らすかもしれない。
「分かったわ。これからはトウマの分もご飯を作るから。なんでも二人分用意するから。だから許して。おねがい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます