ママはニセモノ

あめこうじ

第1話 一年ぶりのママ

 僕はハルト十歳。弟のトウマは八歳。パパの車で郊外の田舎に向かっている。夏休みに一週間ママのところに泊まりに行くことになった。大人の事情でパパとママは一年前から別居している。ママに会うのは一年ぶりだ。

 車はぐんぐん走っていく。外の景色はドンヨリしている。


 脇道に入り開けた場所についた。

  

「ハルト着いたぞ」

 パパが荷物を持って車から外に出た。二階建ての一軒家がある。ここには以前にも来たことがある。別荘だ。パパがインターホンを押した。

「反応がないな。出かけてるのかな?」

 ドアノブに手をかけると開いていたので家に入った。


「おーい。ママー」

 パパが呼んだ。すると二階の階段からママがパジャマ姿で降りてきた。

「パパー。ハルトー」

 ママの鼻には大きなガーゼが貼られている。パパが説明した。

「ママは怪我をして鼻を手術をしたんだ。もうしばらくの辛抱だ」

 ママが近くまで来た。僕を見つめる。

「ハルト会いたかった。ごめんねこんな姿で。もうしばらくの辛抱なの」

  

 一年ぶりのママだ。でも僕はママを見て少し違和感を覚えた。別に鼻にガーゼをしているからというわけではない。雰囲気が違う。なにか他人行儀な気がする。一年ぶりだから仕方がないか。

  

 弟のトウマが僕に小声で言った。

「ハルト。ママ変わったね」

 僕は首を横に振った。今そんなことを言うべきではない。僕は精一杯明るい声で答えた。

「ママ久しぶり。会いたかった!」

  

 パパが玄関横にある段ボール箱を開けた。中には野菜が入っている。

「食料は大丈夫か?」

「大丈夫。隣の山本さんに頼んであるから。配達してくれるの。しかしこんな田舎で車を運転できないのは本当に不便だわ」

「ママは車はやめた方がいいよ」

 弟のトウマが僕に言った。

「あれ? ママって車の運転できなかったっけ」

「できたけど怪我のせいかな?」

  

「じゃあハルト元気でな。パパは仕事に行ってくる。ママもよろしくな」

 パパは帰って行った。


 僕たちは荷物を置きに子供部屋に行った。

「二段ベットがある。僕は下でいいからトウマは上に行きなよ」

「やったー上だ」

 弟のトウマは2つ下だ。僕がいつもトウマの面倒を見ている。トウマが上のベッドから乗り出して聞いてきた。

  

「ハルト。ママの顔。大きなガーゼだったね」

「そうだね。なんか怪我してのかな。。ママは一年間何してたんだろ」

「気になるけど聞いちゃダメな気もする。ハルトも聞かない方がいいよ」

「うーん。なんか思い出せそうで思い出せないんだよな」

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