第47話 学校敷地内のお店
お店の場所は、教室のある校舎から少し離れた場所にあった。
「あっち側に行くと、私達が暮らしてる寮があるよ」
「へぇ~、茜さんの家とは反対方向なんだ」
学校と寮の間にお店が集まる建物があり、寮とは反対方向に移動すれば茜さん家がある。基本的に寮住みになるので、学校と寮のどちらからでもアクセスしやすい場所に建てられたのだと思う。私が茜さんの家から行くには、少しだけ遠くなる感じだ。少しだから、あまり気にならないけど。
「ここがお店が集まってる建物。文房具屋、書店、服屋まで色々あるよ」
「ん。薬も売ってる」
「へぇ~、自分用で必要になるかもだし、色々と見て回ろうかな。二人は、まだ時間大丈夫? あれだったら、ここで解散でも大丈夫だよ」
「平気平気。全然余裕」
「ん」
二人にも予定があると思ったけど、普通に付き合ってくれるみたい。師匠はポンチョの中で丸くなっている。
そのまま中に入ると、ショッピングモールのような場所が広がっていた。結構、生徒達で賑わっている。
「おぉ……どこから見れば良いのかわからないや」
「基本的に一階に文房具屋と本屋と薬局が並んでるよ。全部品揃えが良いから、結構規模が大きいんだよね。二階は全部服屋。色々な店の服があるからね。高級ブランドはないけどね」
「まぁ、高級ブランドに興味はないから大丈夫」
「何買う?」
「う~ん……特に買うものはないけど、薬は一通り見ておきたいかな」
「んじゃ、あっちだね」
寧音に案内して貰って、薬局全体を歩いていつも使っている薬とかが売っているか確認しておく。無くなったら、買い足さないといけないからね。
「師匠は、必要な薬とかある?」
「猫の私が普通に人用の薬を使えると思う?」
「それもそっか。何か欲しいものは?」
「そうね……まとめ売りのノートがあると助かるわね」
「ノート? じゃあ、文房具屋だね」
「文房具はあっち」
文房具屋でまとめ売りのノートを買って、本屋も一通り見てみた。大きな本屋と同じくらいの品揃えで、何でもあるような感じだった。漫画とかも取り揃えてあるので、娯楽という面でも大きい。
「色々とあるけど、家電とかはないんだね」
「まぁ、部屋の中の家電に関しては申請すれば新しくしてくれるからね」
「学校持ち」
「そうなんだ」
家電とかはお金が掛かりすぎるからとかそういうのがあるのかな。後は、寮の備品って扱いなのかも。買い物を終わらせて、購買棟から出て行く。
「それじゃあ、今日はここで解散って事で。また明日ね」
「明日」
「うん。今日はありがとうね」
ここで解散して、師匠と一緒に家に帰っていく。
「今日は楽しかったね」
「そうね。学校に関して、色々と知る事が出来たのは大きいわ。それに、仕事の話もね」
「討伐依頼もいずれは受けた方が良いよね?」
「そうね。そういう経験もしておいた方が良いかもしれないわね。特に幽霊関係の仕事は、自分の周りに幽霊が来た時の対処を学べるもの。その前に除霊方法を学んでおかないといけないけれどね」
「それもそっか。そうしたら、私が行けるのは半年後くらい?」
「寧音や蒼が行くときに一緒に行くと良いわ。除霊方法とかは私が教えられるもの」
「そっか。皆で行った方が安全だもんね」
師匠が除霊方法を教えてくれれば、より安全に仕事をこなせる。その前にある程度色々な事が出来るようにならないといけないかな。まじめに授業を受けないと。
「それじゃあ、帰り道はいつもの三種操作をやってもらいましょうか」
「えっ……歩きながらって事?」
「そういう事。この修行は欠かしてはいけないものだから、頑張りなさい」
「うぅ……は~い」
放課後に色々としたから、こういう何もないただの帰り道にも修行をする事にしたらしい。まぁ、必要な事だから、しっかりとやる。ちょっとだけ歩みが遅くなったけど、普通に帰る事は出来た。
メイさんが出迎えてくれて、既にお風呂が沸いているという事で、先にお風呂に入る事にした。お風呂から出て、部屋で修行をしていたらメイさんが、ご飯が出来たと呼びに来たので、師匠と一緒に食堂に向かう。すると、既に茜さんがいた。
「茜さん、おかえりなさい」
「ただいま、師匠、水琴ちゃん」
皆が揃ったところで、夕飯が始まる。
「そういえば、友達が茜さんの研究の手伝いをした事があるって言っていたんですけど、そういう仕事って多いんですか?」
「う~ん……私の場合はインスピレーションを得られるように気分転換で出すからなぁ。普通の研究も手伝いが必要になる事はあるだろうけど、頻繁に頼む事は少ないかなぁ。もしかして、お金が必要になったぁ? 基本的に教科書は支給だし……あっ! お昼代! うっかりしてたぁ……後であげるねぇ」
「あ、いや、お金はお母さん達が仕送りでくれるみたいなので」
「そうなの? じゃあ、他に必要なものでもあったぁ?」
「いえ、自分で使えるお金を用意しておこうかなと」
「あまり過保護なのも良い事じゃないわよ」
このままだと茜さんがお金を出すと言い続けると思ったのか、師匠がそう言った。それに対して、茜さんは渋々ながら頷いた。
「はぁい。そうだぁ。討伐系の仕事をやるときは、渚ちゃんに言ってからねぇ。色々と必要なものの支給もあるからぁ」
「支給ですか?」
「うん。まだ交渉途中だから、おおっぴらに魔法は使えないんだよねぇ。一般の人達に見えにくくなるように、天狗の隠れ蓑っていうのを貰えるの。あまり悪用したら、退学になるから気を付けてねぇ。水琴ちゃんは大丈夫だろうけどぉ」
外での活動のために必要なものらしい。『隠れ蓑』を常時発動するみたいな魔法道具なのかな。
「でも、仕事かぁ……水琴ちゃんにモデルになってもらおうかなぁ」
「モデルって、研究の手伝いって事ですか?」
「うん。水琴ちゃんなら良い題材になるかもねぇ」
「私を描くことで発動する絵画魔術もあるんですか?」
「大体はないかなぁ。ただ人を描くんじゃなくて、色々と構図を考えれば発動するけどねぇ。その人を描くことで、お守りとして活用する事も出来たりするよぉ。まぁ、絵画魔術の範囲内だと気休めになるけどねぇ」
「でも、研究って事はお守り作りとは別ですよね?」
「ううん。さっきも言った通り、インスピレーションを得られるように気分転換したいだけだからね。前に来たのは……寧音ちゃんだったかな。明るくて良い子だったねぇ。あまりジッとしていられない子かと思ったけど、普通に動かずにいたから、ちょっと驚いちゃったよぉ。あの子は良いモデルだったなぁ。均整の取れた体型で描いてて楽しかったからぁ。ヌードで描いてみたかったけど、さすがに、生徒にヌードをさせるわけにもいかないしねぇ」
茜さんは楽しそうに語っていた。寧音がモデルをした事もしっかり覚えているらしい。モデルとしても良い感じだったみたい。ただそれよりも一つ気付いた事もあった。
「私がモデルになったら、ヌードをさせるつもりでした?」
茜さんは笑顔でこっちを見てからウィンクで答えた。絶対にさせるつもりだった。私の事は生徒というよりも妹弟子として見ていると思うので、そういう制限もないのだと思う。
「別に人に見せたりしないならやっても良いですけど」
「本当? じゃあ、次の休みの日に、水琴ちゃんにプレゼントする用で描いてあげるねぇ」
「でも、寧音程良い身体はしてないですよ? それでも大丈夫ですか?」
「水琴ちゃんは水琴ちゃんで魅力的だと思うよぉ」
(何だか誰にでも言っていそうな台詞だなぁ……口説き文句で有りそうだし)
そんな事に苦笑いしながら、夕飯を食べ終えて部屋に戻った。そして、魔力の修行をしてから眠りについた。
猫魔女と弟子と魔法の世界 月輪林檎 @tukinowa3208
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