エピローグ 【白魔術】 一通の手紙

 古来より、願いを叶えてやるといいながら、結果的に人を不幸に陥れてきた『黒魔術』の勢力が世界各地で見られた。


 その闇の力は強大で、その力に絡めとられてしまったものが救われることはなかった。世界は彼らの意のままになってしまうのでは、と危惧された。だが、神は人を見捨てはしなかった。


 その『黒魔術』の力を破壊させるためにもうひとつの勢力が生まれたのだ。


 それこそがまさに『』だった。






                 ★






 その手紙が届いたのは、奈都芽が実家で陽ちゃんから母の真相を聞かされてから三か月後のことだった。


 差出人が書かれていない手紙を受け取った奈都芽は開けるかどうか迷ったが、何かに背中を押されるようにその封を開けることになった。手紙にはこう記されていた。






 拝啓 カワタ様  




 突然の手紙に驚かれていることでしょうね。


 差出人が誰なのか、もちろん気になることでしょう。そのお気持ちはよくわかります。しかし、現在のカワタ様にとって差出人の正体を知ることよりもっと大切なことがあるのではないでしょうか?




 カワタ様につきましては、『黒魔術』の契約を交わされたことと存じます。おそらくですがもうすでにその『願い』が叶えられ、さらには『約束』が履行されていることと思われます。


 そして、今まさに絶望的な状況に陥ってしまっていることでしょう。




 さて、本日お手紙を差し上げたのは他でもありません。あの『黒魔術』の『約束』(約束と耳障りのいい言葉を使っておりますが、それは『罰』と言ってもいいでしょう)の力を打ち消すためにこれから申しあげる『』の力を使っていただこうということでございます。


 その内容についてはこれからゆっくりと申しあげることとして、先に大切なことを書かせていただきます。




 この手紙を読み終わりましたら、その晩、深夜二時、カワタ様の部屋の窓から見えるあの森の中に行き、同封した香りのする花と共にこの手紙に火をつけ——


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黒魔術と白魔術 異世界ホテルでおきた奇妙なできごと トミー・G @10mmy-g

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