君と僕、ハッピーエンドVSバッドエンド

電子サキュバスショコチャ

第1話 君とあなた。


 西暦2060年。今や技術は人の精神に干渉し、脳波は映像化されるようになった。心の鏡を調整し生み出される空想の人物、それと対話することで、一昔前よりも格段なカウンセリングを行えるようになっていた。自分で自分をカウンセリングできる世の中となり、人々の苦しむ時間は格段に減った。


 コンピュータに取り込まれたデータと、悩みを解決した実績を照らし合わせ、膨大な情報を元に慰みと励ましを行う。単純ながらもその体験は人それぞれで、同じ人でもその体験は同一のものとはなりえない。

 

 そしてそんな世界となってなお、苦しむ人が一人。


 その者の名は「  」しがない空想家。またの名を小説家、と自称していた。

 そんな僻者をば、今回カウンセリングするのもまた、僻者。己の鏡を調整したやつがれ


 その者の悩みは「ハッピーエンドにしたい」それと「バッドエンドにしたい」であった。これを解決するべく、己の影法師は生み出された。


「おはよう君実、それじゃあゲームをしよう」


 唐突に白髪の子供は言った。私は何を急にと、目をその顔に釘づかれて、言葉が紡げなかった。


「君の悩みは至って単純だろう?それを解決するのは『私』すなわち僕だ。だからここに来たんだよねそうだよね違うかい?」


 確かにそうだった。直前の記憶が無く、今に至るまでの記憶が言われるまで思い出せなかったし、何より疑問にすら思わなかった。これが現代のカウンセリングの今だ。入った瞬間に夢へと接続され、それは一般的に夢だと気が付かないのと同じであると。


 しかしこの光景はあまりにもリアルで、わかった今でも夢の中だとは思えない。起きようとは思わないが、恐らく起きようとしても無駄なのだろう。機械により設定されたことが為されない限り解放されず、そしてどれほどの時を過ごそうとも現実の世界には何も影響はない。むしろ、どれだけの時が経とうとも、目が覚めたらば、必ず次の日の朝になるだけなのだと。そう説明をされている。


 「これから僕がすることは、全て君の意志で、何をされても、何が行なわれても君自身の望みだということを理解するんだ。それがこのゲームの終わりであり、この夢の為されるべきことだ。いいね」


 ただ頷くほかない。

 それだけ自分は詰まっていて、この終わりを迎えることを切に願っているのだから。

 このゲームで全てに決着がつくのなら、この時の苦痛全てを受け入れる。その為にこの設定をしたのだから。


【物語をハッピーエンドにするか、バッドエンドにするか、それを決めること】


「さぁ、ゲームの始まりだよ」


 

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