ホシノカケラ

蒼桐大紀

Stardust message

 立ち入り禁止の帯をくぐると、枯草の丘が目の前にあった。

「待てよ、朝都」

「柊二が遅いんだよ」

 宇宙から星が落ちてきた。そのニュースを聞いたとき、絶対見に行こうと二人で決めた。親にも学校にも内緒で実行して、調査隊やら警察やらの目をかいくぐってそこに行った。

 ぶわっと風が吹いた。

 枯草が舞い上がり、朝都が転びそうになる。柊二がその腕をつかんだ。ふにっとした感触に心臓が跳ねた。

「ありがと柊二」

 逆光の中で朝都が笑った。やわらかい二の腕の感触がよみがえり、どきどきする。

 柊二はかぶりを振った。朝都は両性具有者だ。二年後。二人が一三歳になるとき、朝都は男か女かを選ばなければならない。

 だけど、と柊二は思う。

 朝都は朝都だ。大人の作った鉄格子のような法律で強制されるのは嫌だった。朝都はどう思っているんだろう?

「あれ? なんか光った」

「あ、おい、朝都」

 朝都は地面に屈んでいて、何かを取り上げていた。金属片だ。何か書いてあると言って、柊二にも見えるようにした。

『この星が落ちる時、誰かが願いをかけたなら、その願いが叶うことを祈る』

 空を見上げると、もう星が出始めていた。

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ホシノカケラ 蒼桐大紀 @aogiritaiki

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