第6話 ケツデカ淫魔とえろジジイ


異世界に来てからというもの一週間の時が経過した。

今振り返ると、異世界に来た瞬間から濃厚過ぎた内容だったなと思う。

変態勇者が魔王城へ戦いに来たり、鶏頭のトリダが勇者を倒したり、俺が魔王エリナに告白されたりとイベントが盛り沢山であった。

だがそれは最初だけで、今は平穏である。


「トーマっ、おはよ!」


隣で寝ていたであろうエリナが俺の上に乗り、顔を近づけて朝の挨拶をした。

近い、近すぎるぞ!お主そんな距離感近いとぶっちゅーするぞ。

エリナとは異世界に来てから殆どを共に過ごしていて、寝る時は添い寝をしないと怒るのだ。

家族や友がいなかった彼女にとって、俺という存在はなにより大切なのだと。

それに一応、俺って彼氏さんらしいので大切にしたい。


「おう、おはようさん」

「私、ご飯作ってくるわ。トーマはゆっくり支度してて。早すぎても朝食は出来上がらないから」


そう言ってエリナは部屋から出て行った。

待ってくれ愛しのマイハニー・・・・・・いや待たなくていいです、美味しいご飯を期待してます。

俺も顔を洗いに洗面所に行こうとベッドから出て、のそのそと歩く。

そして部屋から出ようとした時、廊下側から何やら視線を感じた。

そして扉を開けると、そこには鶏がいた。

いや正確には鶏頭だけど。


「尊いっスね。おはようっス先輩」

「取り敢えず聞きたいんだけどさ、お前今のやり取り聞いてた?」

「ご飯楽しみっスね!」

「はい、焼き鳥確定ね。こんがり炭火焼きしてやんよ」

「勘弁っス!」


手を合わせて頭を下げるのは、勇者を倒した英雄──コケコッコー族の当主トリダだ。

元魔王城の門番だったが、今回の勇者戦で活躍してなんと魔王幹部になった。

まぁ悪いやつじゃないし、何故か俺の事を先輩呼ばわりするし許すか。


「同じ幹部同士、仲良くするっスよ〜」

「そこどいてくれ。顔洗いたい」

「おっと邪魔したっスね。んじゃ俺っちは城の見回りしてくるっス!」


トリダはステップを踏みながら行ってしまった。

あいつはどうやら魔王幹部であるおっぱいオバケのユニと婚約を交わしたらしい。

喜ばしい事だが、何とも不揃いな二人で、クスッと笑いが出る。

そしてトリダも言っていたが、俺も魔王幹部になった。

一度は断ったが、やはりニートはマズイだろうってのと、エリナを支えてやりたいって思ったから結局なってしまった。


洗面所で顔を洗った俺は、部屋へと戻って学ランに・・・・・・っと、そういえば新しくエリナが服を買ってくれたんだった。

確かクローゼットの中に・・・・・・ん?スーツだな、これ。

灰色のカッターシャツに紺色のネクタイ、黒のスーツという一見ホストか?みたいな感じになりそうな服だ。

まぁ折角エリナが買ってくれたから、着ないと申し訳ないだろう。

と、着てみたが意外と似合っているのでは?

鏡の前でナルシストになるキモイ俺氏。

身長もそこそこには高いから、スーツが似合うな。しかもちゃんと革靴あるし、完璧かよエリナちゃん。


「トーマ、ご飯出来たけど支度は済ん・・・・・・かっこいいわね!やっぱトーマはしっかりとした服装が似合うわ!う〜ん、髪型も変えましょ」


エリナが部屋に入ってくるなり、俺の髪を弄り出す。ちょいと擽ったいぞ。

後は彼女がやり易いように少ししゃがんだ。

中腰スタイルは腰に来るから、早めに終わらせてねエリナちゃん。


「うん!これで完璧よ!トーマってば黒と紫のメッシュだから、こうやってヘヤピンとか使うと可愛いわね」

「わお、これって俺?髪型でこんなに変わるもん?」

「印象はだいぶ変わるわね。明日から毎日、私が付き合ってあげるわよ。今のトーマ、街に行けば声を沢山掛けられるかも」


そんなに良いのか?っていつもの俺なら思うが、鏡の前の自分を見れば、何となく納得してしまう。

さてと、朝食が出来たのなら食べに行こうか。

俺はエリナの手を握り、リビングルームへと向かった。


─────────────


朝食を食べ終えた後は、魔王幹部としての仕事の始まりである。

俺の仕事は街の見回りという簡単なお仕事だ。

ただ街をぶらぶらと歩いていれば良いだけなんて、楽すぎるだろ。

いやずっーとだらだらと歩いている訳でもないけどね。

やはり犯罪者予備軍みたいな奴いるし、窃盗なんかも起こりうるだろうし、ちゃんと見る時は見ている。


「行ってらっしゃい、トーマ。これ、お弁当ね。それと元気が出る様に──ちゅ」


エリナは身を乗り出し、頬にキスをしてくれた。


「ありがとう。元気は出たんだが、どうやら股間も元気になったみたいだ」

「ちょっ、ば、ばか!そういうのは・・・・・・夜にしてよ」


いや夜なら良いんですね?!

でも俺まだそこまで覚悟決めれてないし、なにより冗談だったんだけどぉ。


「んじゃ行ってくる!」


軽く手を振り、城を後にして街へと俺は向かった。


─────────────


街を見て回って数時間、お昼前に俺はとある場所に来ていた。


「おーい、はやくこいよぉ!」

「まってよぉ〜」

「おまえはいっつもおそいよなぁ」

「おにぃちゃんがはやいの!」


芝生が広がる所で兄妹だろうか、仲良く走り回っていた。

いいねぇ、なんかこう・・・・・・いいねぇ。

それと走り回っていたのは兄妹以外にも、沢山の子が同じく走っていた。


「やーい、タッチ!おまえ、おに!」

「やられた〜!」


鬼ごっこを楽しんでいる子供達がいるのは、孤児院である。

人間と魔族との戦いで親を亡くした子供が増えているらしく、偶に遊んであげなさいってエリナが言っていた。

しかし、勇者騒動が終えて次の日に来たのにも関わらず、未だに馴染めてない俺。

もしかして子供に好かれないのかなぁ。


「こんにちわ、トーマ様。今日も来て下さって、ありがとうございます」


ベンチに座っていると、隣へ静かに座り、こちらを見る女性がいた。

紺色の髪に少し尖った耳を持ち、修道服に身を包んだ彼女は孤児院のシスターである。


「どうもティナさん。子供達、元気一杯ですね」

「ええ、いつもはしゃいで可愛らしいです」


彼女の名前はティナ──本人曰く吸血鬼であるという。

え、日光は大丈夫なん?吸血鬼が嫌いそうな教会になぜ所属してるの?って思うかもしれないが、ここは魔族国であり自由なのだ。

日光に関しては防止できるアイテムがあって、そのお掛けで影で暮らすことも無くなり、他の種族とも仲良くやっているらしい。

そしてこのティナさん・・・・・・ナイスバディの持ち主である。

擬音で表すならボッ、ギュ、ボンッッッ!!!って感じだ。

胸はユニさんぐらいだが、ケツがデケェんだ。

きっとこのデカ尻をぶっ叩きたいと思った兄貴達は多いだろう。

かくいう俺もその兄貴の一人である(キモいんで無視してね)

後は開いてるのかどうか分からない目をしている。

一見、寝てね?みたいな感じだがちゃんと起きてます。


「子供達とは遊ばないのですか?きっと喜びますよ」


俺はあんたと遊びたいよ。修道服の上からでも分かるエロい何かを見せつけやがって。


「気持ちは分かるんですけど、出来るだけあの子達だけで遊ばせたいんです。お互いに分かち合い、困難に立ち向かえる力をつけて欲しいから。勿論、行き詰まったら助けますよ?」

「ふふっ、素敵なお考えですね」


ニコっと笑顔が眩しい。痛い、俺胸が痛い。

ただただ子供達の仲に入れないからって、馬鹿みたいな言い訳してんのに、そんな笑顔を見せるな!嘘なんです!ごめんなさい!

心の中で謝りながら、子供達に目をやると小さい子がこちらへやって来た。

長いピンクブロンドの髪に、前髪が長くてあまり表情が分からない子だ。

でも全体的に見れば、大人しめの子なのかな?と見てとれる。

両手で分厚い本を抱えている姿が愛らしい。


「フィオナ、どうしたのです?」


この子の名前、フィオナって言うのか。

でゅふ、きみぃ・・・・・・フィオナちゃんっていふのぉぉ??

おっと一線を超えてしまいそうだった。危ない危ない。


「・・・・・・ほん、よんで」

「ええ、良いですよ。貸してください」

「・・・・・・ううん、ちがう」

「え、えっと・・・・・・」


おいフィオナちゃん、尻デカ吸血鬼お姉さんを困らせるんじゃぁねぇ。

なんやねん、読んでって言ったのに違うって・・・・・・おまっ、なんやねん。


「・・・・・・ほん、よんで」


フィオナは俺の方に来て、本を渡してきた。

しかも自然と俺、受け取っちゃったし・・・・・・え、俺読むの?

いやいや童話とか読むのキチィ・・・・・・いやゴリゴリの文字がビッシリ書いてあるガチの本じゃんこれ。

え、この世界の子供ってこんな勤勉なの?

まぁ読めないって訳じゃないし、付き合ってやるか。

フィオナは見た感じ八歳ぐらいだろうか?でも少し大人びている印象がある。


「良いよ。読んであげるから、見やすいように膝の上に乗りな」

「・・・・・・うん、ありがと」

「フィオナをお願いしますね。私は別の子達を見てきます」

「ええ、任せてください」


ふっ、今の俺、きっとかっこいいよな・・・・・・頭痛くなってきた。

さてと、読んでほしそうに待ってるから、早速読むんだが・・・・・・タイトルが『基本魔術のススメ』?

うん、やっぱ魔族って早い段階から扱うのか。

よく見ればフィオナも耳が小さく尖ってるし、まさかティナさんと同じ吸血鬼か?


「・・・・・・まだ?」

「あぁ、わりぃな。今読むから、えっーと・・・・・・」


そして俺はフィオナの為にかなりの文字数を読んだ。

普通に絵本とかだったら軽く読めんのに、なんでこんな重い本持ってきたんだよ。

とツッコミを入れた所で、チャイムの音が響いた。

皆お待ちかねのお昼の時間だ。

勿論、フィオナもこの時間は楽しみにしている事だろう。

だが彼女は動こうとしなかった。

おい、俺の膝の上にずっといるつもりか、幼女。可愛いロリだからって許されると思うなよ。


「昼飯、行かないのか?」

「・・・・・・ほん、よんでほしい」

「昼からでもいいだろうよ。俺だって飯食うし、その後は街の見回りしないといけないんだから。そんなに時間はないぞ?」

「・・・・・・なら、おうちいく」


ん?それは俺の住んでいる家という事か?

つまりは魔王城に行ってまで読んでもらいたいって事か。

いやぁ、いくらなんでもそれはエリナが何を言うか分からないな。

『あんた、幼女に手を出したわけ?!最低ね!』

なんて言われたら嫌だぞ俺。


「・・・・・・ごはんも、いっしょ。まってて、とってくる」

「あっ、おいって・・・・・・行っちゃったし。つかなんで俺に絡むんだよ。もしかして子供相手に可哀想な奴とか思われてる?」


俺の膝から飛び降り、ぱたぱたと走っていったフィオナはしばらく帰ってこなかった。

俺も食べる準備しよ。

エリナたんから受け取った愛情たっぷりのまごころ弁当を包んでいる布をとり、蓋を開けると──うわ!眩しいっ!!なんてある訳ねぇだろ。


「お、角煮かこれ?異世界でもあるんだな!そういえば昨日の夜は調理場から出てこなかったっけ。俺一番好きな料理が角煮だし、城に帰ったらエリナに・・・・・・おい邪魔だぞ」

「・・・・・・じゅるり」


いつの間にかフィオナが来ていた。

俺の隣でベンチに四つん這いになり、じっくりと弁当の中身を見ている。

子供らしい反応で可愛いなおい。

フィオナはジャムを塗ったパンと牛乳?を持ってきていた。

こんだけでは足りないだろうよ。


「取り敢えず行儀が悪いから、ちゃんと座って。それといただきますはちゃんとする」

「・・・・・・ん、いただきます。──はむっ」


小さな口で一生懸命にパンを頬張るロリ。

きっとこのパンは幸せ者だなぁ、むさ苦しいオッサンじゃなくロリに食べてもらえるだなんて。

俺もいただきますをして箸を角煮へと持っていく。──おおお!柔らかいなぁおい!


「あー・・・・・・うまぁ」

「・・・・・・それなに?いいにおい」

「これか?角煮って料理だ。食べる?」

「・・・・・・いいの?たべていいの?」

「遠慮すんなよ。ほら、あーん」

「・・・・・・あーん。ん!おいしい・・・・・・」

「お、笑ったな!なんだよぉ、笑えば可愛いじゃんかぁ」

「・・・・・・」

「おい、スっと真顔になんな!子供らしく笑え!」


まぁ可愛い一面が見れてよかった。

でもなんでこんなにも子供らしくないんだろうか。

う〜ん、でもそうか・・・・・・孤児の集まりだし、フィオナだって両親がいないんだよな。

いっその事、ハッキリさせた方が俺も面倒を見やすいし聞いてみるかな。


「なぁフィオナ。孤児院にいるってことは家族はいないんだろ?」

「・・・・・・ここのみんなが、かぞく」

「そうじゃなくて、パパとかママとか」

「・・・・・・・・・いない。せんそうで、しんじゃったの」


そうか、やっぱ戦死したんだ。

いつの時代も世界も、争いは絶えずって事かよ。・・・・・・可哀想にな。

残された子供達は何をしたらいいかも分からない年齢なのに。


「・・・・・・まえのまおうさま、せんそうだいすき」

「ん?」

「・・・・・・いまのまおうさま、せんそうきらい。でもパパ、ママはかえってこない」


フィオナの言葉を聞いて、俺は胸が苦しくなった。子供だからこそ、見える世界がある。

それにフィオナだって寂しいんだろう。

だから、俺の家に行くとか言い出したんだと思う。


「・・・・・・わたし、つよくなりたい。でもにんげん、ころしたくない」

「ん〜そうか。でもいつかは覚悟を決める日が来ると思うよ。誰かを守る為に強くなりたいんだろ?」

「・・・・・・うん、そうなの」

「それなら絶対、フィオナには壁が待ち構えてるな。殺したくなくても、殺さなきゃいけない時が来る。──殺さなきゃ殺されるってのが戦争さ。子供に言う事じゃないけど、教えとく」


難しい話かもしれないけど、この子ならきっと理解してくれるかなと思ったから伝えた。

俺が住んでいた世界だって、平和とは言えど各地で戦争はあった。

毎日人が死んでいく世界が俺には考えられなかったけど、この世界じゃ日常なんだろ。


「・・・・・・ん、おしえてくれてありがと」

「正直に答えてくれ。今は楽しいか?寂しさとか、感じてるか?」

「・・・・・・たのしくはない、ほんよんでるだけ。さびしいよ」

「そっか、んじゃ夕方頃に迎えに来てやるよ。今日の夜も一緒にご飯食べよう」


俺は立ち上がり、フィオナの頭を撫でて、この場を後にした。

本当は本を読んでやりたかったけど、ティナさんに伝えないといけないしな。


俺は子供達と食事をするティナさんを孤児院の施設内で見つけ、手招きしてこちらへ呼び寄せた。


「どうしました?トーマ様。もしやフィオナが何かしましたか?」

「いや、あの子はいい子だよ。ただちょっとお願いがあってさ──」


ティナさんにはフィオナを一日だけ城へ招待したいと伝えた。

彼女に少しでも寂しさを感じさせないよう、色々と世話したい。

それと・・・・・・もしフィオナが離れたくないって言った時は、俺が責任を持って育てたいって事も伝えた。

するとティナは静かに涙を零したが、それを誤魔化す素振りを見せる。


「分かりました。・・・・・・夕方頃ですね。身支度させておきます」

「えぇ、お願いします。俺はまた、見回りに行ってくるんで」

「はい、行ってらっしゃいませ」


軽く手を振るティナさんに会釈をしてから、孤児院から離れた。


──────────


魔族国の魔都エレシュキガルは大層賑やかである。

本当に戦争してんのか?って疑ってしまうぐらいには、活気に溢れていた。

だがそれは初日の感想であり、今は慣れた足取りで舗装された道を歩いていく。

偶に名前を呼ばれたり、サインを求められたりするのがちょっと嬉しい。

前の暮らしから見たら、有り得ないからな。

特に女の子達からは握手を求められる事が多いが、今はそう構ってもいられない。

俺は今、求めている物があるからだ。

フィオナが喜びそうな本を探しているんだけどね。


「あった、古本屋さん」

「おや、いらっしゃい」


店の前を箒で掃除していたおじいちゃんが、優しく声を掛けてくれた。

背筋は曲がり、長い顎髭が特徴的な可愛いおじいちゃんである。


「おじいちゃん、魔術関連の本ってある?出来るだけ分かりやすく書いてあって、かつちょい古めのレアな本が欲しいんだけど」

「うぅむ・・・・・・こっちに来なさいな」


本屋のおじいちゃんはゆっくりと歩き出した。

その後ろを歩幅を合わせながら歩いていく。

店の中は結構広くて、本の匂いに包まれていた。

なんか久々にこういう匂いを嗅いだ気がする。

小さい時以来だろうなぁ。

今やデジタル化が進んでスマホで見る事が多いし、文明を感じる。

おじいちゃんに着いて行くと、ようやく足を止めた。

本棚にある本を見ると・・・・・・そこには男のロマンが詰まっていた。

誰もが憧れ、捨ててあったとしてもキャッキャって喜んだあの光景を思い出させる本がいっぱいだ。

──いやエロ本ばっかりやんけ!!!

あ、あれ?注文したよね・・・・・・間違いなく俺ちゃんとどんな本を探してるのか言ったよね?


「お、おじいちゃん?」

「これこそ、魔術じゃ。えっろい肢体で男を誘い、股を開いている様は正に女神。そして写真ばかりで分かりやすく、レア物もあるぞ」

「・・・・・・・・・・・・」


こいつただのえろジジイやんけ。

あれだろ?公園で子連れの女性のケツ見てる奴だろ?

電車に乗って何処かに行くと思いきや、ただ女子高生の瑞々しい身体を舐め回すように見るのが目的の存在だろこのジジイ。

あーあー優しいおじいちゃんが一気にえろジジイになりやがってよぉー。


「おじいちゃん、サキュバス系の本ある?俺って女性優位が好きなんだよね」


うん、確かに魔術だな。俺の心の内側に潜む、走れエロスが勝手に言葉を発してしまう。


「おぉお、お主も分かっておるのぉ!儂もサキュバス大好きなのじゃ!よし、お代はタダにしてやるから、好きな本持っていきなさい」

「ふぁ!?ま、まじすか?!ありがとナス!」


おじいちゃん、俺・・・・・・ここ毎日通うわ。

とまぁ、色々と選別した後に袋に入れてもらった。

ありがとう・・・・・・本当にありがとう。


「よし、魔術関連の古い貴重な本じゃったな。これじゃよ・・・・・・流石にこれはお代は貰うからのぅ」

「いや最初から出せ!」


今どこから出したんだよ!ドラ〇もんじゃあるまいしよぉ。

えろジジイから分厚い本を受け取り、触れてみるとかなり年季のある本だって素人でも分かる。

これさ、一体幾ら掛かるの?


「おじいちゃん、これいくら?」

「七十万ギルカじゃな」


俺は、えろジジイの回答に頭が痛くなった。

この国の紙幣はギルカと言う。

日本の円とだいたい価値は一緒で、一円が一ギルカとなっているんだ。

そしてこの本の値段が日本円で七十万円って事だけど・・・・・・。

いや一応払えるには払えるんだ。

エリナから貰った魔王幹部用のクレカがあるからさ。

なんで異世界でクレジットカードがあるんだよってツッコミは控えてくれ読者。

しかもこのクレカ、上限がないのである。

最高かよマジでエリナちゃん、ちゅきちゅき。

しかし払った所で多分エリナから説教される可能性が高い。

でも可愛いフィオナの為なんだ──


「おじいちゃん、クレカ払いで」


俺は覚悟を決めた。怒られても良いってね!

子供が産まれたら、多分俺なんでも買ってやる親になるかもしれない。

つその度にお嫁さんに怒られてるんだろうな。


「ほっほっ、太っ腹じゃのぉ。あまりお嫁さんを困らせるんじゃないよ」


そう言ってカードを受け取ったおじいちゃん。


「え、嫁なんて俺いないけど?」

「嘘は良くないのぅ。雌の匂いがするんじゃよ」


・・・・・・あーダメだこのジジイ。

本当に救いようなくて困った存在だ。

俺は心に誓うよ──こんなジジイにはならないってね。


──────────────


本を無事に購入した俺は、一度城へと帰って荷物を置いて孤児院に向かった。

既にエリナには子供が遊びに来ると伝えている。

エリナ本人も大変喜んでいた。きっと子供が好きなんだろう。


『え?子供が一日泊まりに来るの?!わぁぁ!だったらご飯一人分余計に作らないと・・・・・・あと、ケーキも好きよね?寝る前に本とか読んであげたい!一緒にお風呂に入って、お歌なんかも!勿論っ、トーマも一緒よ!』


終始、笑顔が絶えずにウキウキとしながら、待ってるねと言っていた。

えろジジイから貰ったサキュバス系の大人の薄い本に関しては、バレてはいない。

そしてこれからもバレてはいけない。

魔法の本には禁書なんて言う呪いにやられてしまう物もあるが、俺にとってはエロ本が禁書である。

いや、俺本人は見てもいいよ?

他人に見られたら、俺に呪いがかかるだろう。


「お待ちしてました、トーマ様」


孤児院に着くと、俺を待っていたのかティナさんが挨拶してくれた。

その隣には黒のワンピースを着たフィオナが立っていて、俺に軽く手を振った。


「フィオナ、お荷物を取りに行ってください。トーマ様をあまり待たせないように」

「・・・・・・うん、ちょっとまってて」


俺にそう告げて孤児院の建物の中へと入って行った。

俺が来る前にここに持ってきておけば良かったのに、わざわざ取りいく必要もなかっただろう。


「トーマ様、今日は一段と格好がよろしいですね。何か心境の変化でも?」

「え?あぁ・・・・・・エリナが用意してくれたんですよ。髪のセットもしてくれたし」

「そうですか・・・・・・私もしたいです」

「はい?」


ティナさんの様子が何処かおかしい。

なんかこう艶かしいのはいつもなんだが、より一層エロい。

しかもモジモジしながらチラチラと見てくる。

顔もほんのり赤いな。


「良かったら、そのぉ・・・・・・夜のお世話なんかも」

「・・・・・・ただいま、にもつとってきた」

「──きゃぁ!も、もぉ、びっくりしました」


ティナさんのエッチな誘いも虚しく、フィオナが戻ってきた。

よし、早く帰ろうそうしよう。

サキュバスからのエッチな誘いはヤバい。

まじでヤバいって・・・・・・空っぽになる未来が待ってる。


「そ、それじゃあ、行くかぁ。ではティナさん、失礼します!」

「あ、あのっ・・・・・・」


ティナさんは何か言いだけであったが、本当にごめんなさい。

また今度、何かで埋め合わせするから!!


「・・・・・・いってきます。ね、てをつなご」

「ん?いいよ。今夜はどんなご飯か気になるな」

「・・・・・・かくに、すき」

「お!フィオナも好きになっちゃったかぁ!うめぇよなぁ〜。止まらなくなるしよ」


ティナさんの気配を後ろから感じつつ、俺達は城へと手を繋いで歩き出した。

ほんとすいません・・・・・・童貞の弊害がここに来て発動してしまう俺であった。

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俺の異世界生活ってなんなん? うちゅまる @Yohata_wanko

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