03

 雅人の部屋の扉を開けるとむっとするアルコールの香り。また飲んだんかいな、と僕は呆れてベッドの上の雅人の頬を叩いたのだが、ぴくりとも動かなかった。


「あっ……えっ……」


 慌てて脈を探るが遅かった。部屋に散らばった酒の缶と薬の容器を見るにつまりはそういうことだ。

 まあ、

 雅人は浮気だと勘違いしていたからそのままにさせていたが、僕の一番稼げるバイトは死体の処理だ。そのバイトがある夜はスマホの電源を切っていた。


「参ったなぁ……」


 雅人のことなら死ぬまで面倒を見るつもりだった。しかし、同居も実現しないまま、こんなに早くにくたばられるとは思わなかったのである。

 きっと正しい方法は今すぐ救急車を呼ぶことで、雅人の親にも連絡して死体を確認してもらうことだろう。そうすると、僕との関係や薬の出所も聞かれるわけで。そいつは困る。

 それに、雅人と引き離されたくない。僕は反応することのない唇をむさぼって髪を撫で、ぎゅっと抱きしめた。


「僕がするしかないなぁ……」


 夜を待って仕事場に雅人を運び込むことに決めた。それからいつものように解体して、欲しい骨の部位だけ抜き取ろう。


「雅人、可哀想になぁ、雅人……」


 死後の世界があるかどうかは知らないが、もしそれがあったら雅人は僕が一途だったことをわかってくれただろうか。そして、待っていてくれるだろうか。

 僕は雅人の辛抱強さに賭けることにした。

 

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燃えるゴミと燃えないゴミ 惣山沙樹 @saki-souyama

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