第5話 ヤンデレ後輩と私(俺)
「久しぶりの日本ね。」
私は空港の到着口から出て、そう一人呟く。
私は父親が経営する会社に勤めており、父親からは信頼が厚く、とある外国関係の取引は私が一任されている。
あの国は、他国の人間に厳しく、すぐにスパイ扱いされて逮捕されることが多々あるので、事情を知らない人には任せられないのだ。
私は、上手く立ち回り、スパイ扱いされることなく、こうして母国である日本の地を踏めることができた。
「さて、父親からは報告は明日で良いと言われているし、今日はゆっくりしようかな。」
なんて思った私は昔のことを少しだけ思い出しつつ、迎えにきている使用人を探した。
私は大学生の頃、気になっていた先輩がいた。
しかし、私が彼を1人の男性として意識した頃には、彼には恋人がいたので、恋心は封印していたんだけど、外国にいる内にホームシックにかかってしまったのか、彼を思い出したら、彼に対する恋心まで思い出してしまった。
その先輩は、鈴本先輩だ。
彼は至って平凡な感じなのだが、なぜか放っておけない感じで、いつも周りに女性がいた。
周りにいる女性は、しっかりとした性格で彼の面倒をよく見る女性ばっかりだった。
まぁ、私も彼の面倒をよくみていたので人のことは言えないけどね。
「神代早苗(かみしろ さなえ)さんですよね。」
私が使用人を探していると目の前には、鈴本先輩と付き合っているはずの女性・・・、(確か、豊見城紅葉って名前だったはずだ。)
その女が立っていた。
しかし、この女・・・、なぜ私の名前を知っている?
鈴本先輩から私のことを聞いたの?
そして、鈴本先輩を射止めたことを自慢しに来たのか?
せっかく封印したはずの恋心が疼く、この女・・・、殺してやろうか?
私がそう思っていると、目の前の豊見城は、殺気を悟ったのか、慌てて、
「違うんです。私は鈴本さんとは別れたんです!」
と言ってきた。
私が訝しげにいると、彼女は
「実は・・・・、」
と言って、彼女自身に起きたことを話しはじめようとしたが、私が、
「その話、長くなりそう?もう少ししたら、私の迎えが来るんだけど?」
と言うと、彼女は慌てて、
「ごめんなさい。長くなりそうなので、どこかで時間を頂きたいのですが、もちろん、今日でなくても大丈夫です。」
と言ってきたので、私は
「分かった。ついて来て。」
そう言って、彼女を連れて行き、迎えにきた使用人と合流した。
そして、運転手に
「彼女は友人で、ちょうど空港で会ったから、どこか食事に行けるところに向かって、場所は任せるわ。」
と、伝えると、運転手からは
「畏まりました。では、お嬢様のお好きな中華料理店に向かいます。あそこなら個室も予約できますし、ごゆっくりお話もできると思います。」
と告げられ、彼女を連れて、私のお気に入りの中華料理店に向かってくれた。
店の前に着くと運転手からは、
「ご友人とはゆっくりお話をされると思いますので、私は先にお嬢様のお荷物をご自宅まで運んでおきます。2時間ほどでお迎えにあがりますが、それでよろしいでしょうか?」
そう告げられたので、
「そうね。そのくらいで大丈夫。もしも長引くようなら私の家で話をするわ。」
と私は返答をした。
そのやり取りを、豊見城紅葉は黙って聞いていた。
彼女はどういうつもりで、私に声をかけてきたのか?
しかし、私が日本に帰国するのがどうして分かったのだろう?
彼女の話しぶりからはたまたま会った感じはしないのだが?
私は多くの疑問を抱えながらも、
豊見城紅葉に微笑みかけて、
「さあ、中に入りましょうか。」
彼女にそう告げた。
婚約している恋人の中身が転生した三十代のおじさんになったけど大丈夫ですか? 鍛冶屋 優雨 @sasuke008
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