「女剣士が主人公で硬派な作品なんてあるわけねーだろ!」→ありました。

 それもド硬派の和風ファンタジーです。和風ファンタジーと言っても「ファンタジー」である以前に「和風」。最初のエピソードを一読するだけで、読者の脳内は即時代小説モードに切り替わること請け合いの文章力です。お疑いなら序章だけでもお目通しあれ。
 舞台となるのは、戦乱の和風世界。「殺し屋」が暗躍し、領土を取ったり取られたりを繰り返す無情な世界の中で、依頼人を守る「修羅狩り」の少女が主人公です。今書いた世界設定は、序章を読めばすんなり頭に入ります。実に良く工夫された導入部――昨今のゲームで言えばチュートリアル――です。
 作り込まれた舞台設定、そして迫力の戦闘シーン。戦闘は剣戟だけではなく、魔法のような妖術を相手にすることもあり、読者を飽きさせません。そして戦うのはヒロイン・刃。圧倒的な戦闘力を有しますが、決して戦闘機械のような存在ではなく、ましてや俺つえー的な強さでもなく、恋に悩んだり仲間との絆を大切にしたり任務の重さに葛藤したりする、内面はごく普通の女の子です。そんな「人間的にリアル」な少女が、戦乱の中を必死に戦い抜いていくのが本作の魅力。和風好きにはもちろん、そうでない方にもおすすめの一作です。