第2話 セクハラしてみた



 ひよりに嫌われる決意を決めた俺が放課後いつものようにひよりと共に下校していると、ひよりの方が俺のことをどこか訝しむような目で見てきた。


「...翔太、なんかソワソワしてるけどどうしたの?」

「んっ? そんなことないぞ?」


 俺は内心動揺しつつも、あくまで表面上は平静を取り繕う。


「...私になにか隠してるでしょ?」

「っ。そんなコトないヨ」

「...分かった。私に隠れて新しく出来たスイーツ屋さん行く気でしょ」

「違う」

「...取り繕っても無駄。行くなら私も連れてって」

「いや、本当に違うから」

「...恥ずかしがらなくてもいい。ついていっえあげる。クレープにアイスにシュークリーム。じゅるり」


 なんだいつもの食いしん坊が発動しただけか。


「もうただひよりが行きたいだけじゃん。というか、それならそれこそ俺じゃなくて女友達作って行けって。絶対その方が楽しいよ」

「...楽しくない」


 流れでそう進めてみるもあいも変わらず答えはNOの一辺倒だ。やはりやるしかない。

 元々、俺が仕掛けようと思っていたのはこのタイミングである。やはり、教室で仕掛けるには人の目もあるしな。リスクも大きい。

 まぁ、肝心のなにをするのかということだが何も俺も無策ではない。この時の為にひよりに嫌われる為の作戦は考えてきてある。


 俺がひよりに嫌われる為に行うこと...ズバリ、セクハラをするということだ。理由は単純明解であり、誰がどう考えても嫌われるに決まってるからである。

 まぁ、だが体に触れるとはもう普通に犯罪な上トラウマを植え付けかねないから論外。

 では、どうやってひよりにセクハラをするのか?


 俺もそこまで詳しく知っているわけでないのだが昨今の情勢では、「綺麗だね」「香水変えた? いい匂いだね」「スタイル抜群だね」といったセリフも付き合っているわけでもない異性に沢山言うことはセクハラにあたるとのこと。(特に容姿に関すること)

 これなら法には触れずにトラウマを与えることもなく、ただ純粋にキモい奴だという認識を与えることが出来るというわけだ。

 つまり俺が今からなにをするかというと、


「ところでさ、よく見たらひよりの今日の髪いつにも増して綺麗だよな」

「えっ?」


 ただ、ひたすらにひよりの容姿を褒めまくる。ただそれだけだ。それだけで、俺はひよりに嫌われることが出来る完璧な作戦っ!


「き、今日は確かに朝早くから気合い入れてセットしてたから気づいて貰えて嬉しい。...これから毎日頑張る」


 まず1つ目の俺の口撃を受けたひよりは何故かポッと顔を少し赤くすると、口元を緩めながらそんなことを言う。

 まぁ、まだ1つ目だからな。今はまだ、ただただ褒められたというだけの認識だろうからな。だが、これが何度も何度も続けばキモいと思い始めるだろう。

 俺は少し思っていた反応とは違うことに動揺しつつも、自分自身を落ち着かせ次の口撃をすることにする。


「目もぱちっとしてるしな、瞳の色とかまるで宝石のように神々しいし。本当に綺麗だよ」

「...も、もういい。充分。褒めすぎ」


 おっ、これは少し効果が出たのではないか? やはりこの作戦は続けることで効果出るもので間違いなさそうだ。となれば、追撃するのみ。


「今の照れてる顔とかも最高に可愛いしな」

「...ありがとっ」


 あれ、感謝されてしまった。というか、普通気持ち悪いと思ったら多少距離を取るはずだが、むしろ心なしか近づいて来てない?


「...ちょっと恥ずかしいけど今日の翔太積極的で嬉しい」

「えっ!? あっ、そう」


 どう判断すべきか俺が決めかねていると、ひよりにそんなことを言われてしまう。よく分からないが嫌われていないことだけは伝わってきた。要するにこの作戦は失敗ということだ。原因はなんだろうか?


「じゃあ、さっき言ってた新しく出来たスイーツ店でも行くか?」


 俺はそんなことを考えながら、この謎にホワホワした雰囲気を変えるためにそうひよりに問いかける。

 しかし、俺の提案にひよりはブンブンと首を振った。さっきまであんなに行きたがってたのに、どうしたのだろうか? もしかすると、俺の嫌われる作戦は成功していたのか? と僅かな希望を抱きつつ理由をひよりに尋ねて見ると、


「...今日は糖分過多」


 たった一言そう返ってくるのだった。


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 次回「亭主関白感を出してみようと思う」


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寡黙で俺以外と友好関係を築こうとしない幼馴染に嫌われたいのに、全然嫌われない話 タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK

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