病弱天使様

冬水葵

第1話 学校の天使様

「朝だよ!お兄ちゃん起きろー!」

「ぐふぅ!?」


朝だというのにハイテンションで寝ていた俺の腹の上に思いっきり飛び込んできたのは今年から高校1年生になった俺の妹、水鏡綸春みかがみいとはだ。


「いやぁ今日も気持ちの良い朝だねぇお兄ちゃん!」

「たった今お前のせいで気持ち良くなくなったわ⋯⋯しかも今外雨だし」

「え!?気持ち良くなくなったって⋯⋯朝から何してたの!?お兄ちゃんの変態!」

「⋯⋯」

「おっとぉ〜?無言は悲しくなるからやめてくれませんかねぇ」

「⋯⋯はぁ、毎回そのテンションで起こしに来るのやめてくれよ⋯⋯」

「え〜?どうしよっ⋯⋯てあれ?お兄ちゃんもしかして今日体調悪い?学校お休みする?」

「⋯⋯いや、ちょっとだるいだけだから学校は行く」

「そう?無理はダメだからね?」

「分かってるよ」


制服に着替え、リビングに入ると⋯⋯


「おはようございます、兄さん」


綸春の双子の弟、水鏡春紗来みかがみはさきがテーブルに朝ごはんを並べていた。


「あぁ、おはよう春紗来、朝ごはんありがとうな」


実は綸春と春紗来はこの家に住んでいる訳では無い。

俺は一人暮らしで綸春と春紗来はお父さんと一緒に実家で暮らしているとだが、お父さんは出張が多く、その間は俺の家に泊まりに来ている。


「いえ、全然このくら⋯⋯い?ってもしかして兄さん体調悪いですか!?姉さん、早く救急車を!」

「よしまかせろ!」

「まてまて落ち着け!?俺は少しだるいだけ全然学校にも行けるから、な? そして綸春も悪ノリするな」

「ちぇー」

「本当に大丈夫ですか?体調が悪化したらすぐ病院に行くんですよ?」

「分かってるから⋯⋯」


少し体調が悪いだけで心配しすぎだ、と言おうとしたが、俺も綸春か春紗来どちらかが体調をくずしたら同じようなことするんだろうなと思い、口を噤んだ。


(やっぱ、2人とも母さんのこと引きずってるよなぁ⋯⋯ま、それは俺もだけど


◆◆◆


「凪、顔色悪いぞ?大丈夫か?」


教室に入ってすぐにそう声をかけてきたのは俺が学校で唯一友達と言える水瀬結城みなせゆうき、俺の幼なじみだ。


「大丈夫だ、顔色が悪いのは元からだからな」

「確かに」

「おいこら」

「冗談だって、だが顔色悪いのは本当だぞ?キツかったらちゃんと保健室行けよ、付き添いはしてやるからさ、妹と弟に余計な心配かけんなよ」

「あぁ、朝2人にタコができるほど言われたからな、分かってるよ」

「ハハッ、2人とも相変わらずブラコンだな」

「全くだ、もう少し兄離れ出来ないもんかな」

「お前もだけどな」

「うっせ」


その時、教室に1人の女子生徒が入ってきた。

その瞬間に教室にいた大半の男子生徒、いや女子生徒までも目を奪われた。

教室に入ってきたのは雨咲涼葉あまさきすずは、滑らかに光を反射している白い髪、引き込まれるような澄んだ水色の瞳を持って、顔の全てのパーツが完璧に噛み合った美しい容姿をしていた。

そしてテストでは毎回学年1位、温和で話しやすい性格など、諸々が相まって学校では影で天使様と呼ばれている。


「おはよー涼葉ちゃん!」

「おはようございます」

「おはよー!」

「あ、あの皆さん、申し訳ないですが準備したいので机に行かせてくれませんか?」


「どうした?凪」

「いや、相変わらず天使様は凄いな、と思ってな」

「あー分かる、人気だよなぁ」

「大変そうだけどな」

「凪は興味無いのか?」

「ないな、お前みたいに顔が良ければあったかもしれないが、俺じゃ無理だ」

「またお前は⋯⋯凪はもうちょい自信をもて、あの2人の兄弟なんだから顔は良い方なのに、もったいないぞ」

「余計なお世話だ、どうせ雨咲さんと関わることないんだから」


⋯⋯この時はまさかあんな事になるとは雀の涙ほども思っていなかった。


「⋯⋯いや雀の涙は違くね?」

「ナレーションにツッコミ入れるなよ」

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病弱天使様 冬水葵 @aoi0208

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