ラストラン、僕らの青春

島原大知

ラストラン、僕らの青春

「みんな、久しぶりだな」

札幌駅のホームで、佐藤健太郎は昔馴染みの仲間たちを見つめていた。

40年の時を経て、学生時代に約束した日本一周鉄道旅行の夢が、今、実現しようとしている。


「本当ね。こうして集まれるなんて、奇跡みたい」

鈴木裕子が柔らかな笑顔を浮かべる。変わらない優しさに、佐藤は懐かしさを覚えた。

「お前は全然変わってないな、裕子は」

田中博史が照れくさそうに言う。学生時代から鈴木への片思いを続けているのは、佐藤には見抜けていた。


「ねえ、ところでさ、みんなこの40年間、何してたの?」

高橋美香が大きな瞳を輝かせて尋ねる。自由奔放な彼女は、昔と変わらずボヘミアンな雰囲気を纏っていた。

「私は大学で歴史を教えている。平和な世界を願って」

渡辺史郎が静かに言葉を紡ぐ。知的な佇まいからは、苦難の歴史を乗り越えてきた強さが感じられた。


佐藤は目を伏せる。この40年、彼は頑張ってきたつもりだった。

仕事に打ち込み、家族を大切にし、それなりの地位も得た。

だが今、胸の奥に空虚さが広がっていた。

「俺は…」

言葉を探すが、うまく続かない。仲間たちの前で、偽りの自分を演じることはできなかった。


「まあ、とにかく旅を楽しみましょう」

そう言って鈴木が佐藤の手を握る。温もりが、佐藤の心に沁みた。

「そうだな。悩みはいっとき忘れて、青春を取り戻すぞ」

佐藤は覚悟を決めた。この旅で、本当の自分を見つけると。


列車が動き出す。窓の外には、雪を頂く山々が聳えていた。

純白の峰々は、大地に屹立する巨人のようだ。

冬の北海道の風景は、厳しくも美しい。荒涼とした大地に、生命の強さを感じる。

「ああ、素晴らしい…」

高橋が感嘆の声を上げる。皆も、窓の外に見入っていた。


「懐かしいな、この景色」

渡辺が呟く。彼の目には、遠い記憶が蘇っているようだった。

「戦後まもなくの頃、復員兵だった父とこの路線に乗ったんだ。焼け野原となった街を、父は悲しそうに見ていた…」

戦争の傷跡は、渡辺の心にも深く刻まれているのだろう。平和の尊さを、彼は身をもって知っているのだ。


「みんな、色んな経験をしてきたんだね」

鈴木の言葉に、一同は頷く。

佐藤は、自分だけが取り残されたような感覚に囚われていた。

胸の奥の虚しさは、大きくなる一方だ。

本当の自分とは何なのか。この歳になっても、佐藤には分からなかった。


そのとき、田中が立ち上がった。

「そろそろ、お弁当にしようか。40年前、裕子が作ってくれたお弁当、覚えてる?」

その言葉に、一同は笑みを浮かべる。

「ああ、あの時は本当に美味しかったな」

学生時代の思い出が、急によみがえってくる。

青春の輝きに満ちた日々。希望に胸を膨らませていた頃。

今はもう、遠い過去の出来事だ。


だが、この5人が集まれたことで、また青春を感じられるのかもしれない。

佐藤は、期待に胸を躍らせた。

仲間との再会は、彼に新たな希望を与えてくれるだろうか。

長い旅の中で、きっと答えが見つかると信じたかった。


列車は白銀の大地を駆け抜けていく。

果てしなく広がる雪景色に、佐藤の心は洗われていくようだった。

夢に描いた旅が、今、始まったのだ。

きっとこの旅の終わりに、本当の自分に出会えると信じて。


列車は一路、南下していく。北海道の雄大な景色が、次第に東北の穏やかな風景に変わっていった。

車窓からは、緑濃い森や清流、のどかな田園風景が眼に飛び込んでくる。

大自然のパノラマに、鈴木裕子は心癒されるのを感じていた。


「ねえ、みんなは学生時代、将来の夢って何だった?」

ふと、高橋美香が尋ねる。

「私は、世界中を旅してまわりたいって思ってたわ。今はライターだから、ある意味夢は叶ったのかも」

高橋の瞳が、好奇心に満ちている。自由を求め続ける彼女からは、今も冒険心が感じられた。


「俺は、漫画家になりたかったなあ」

意外にも、田中博史がそう言った。

「え、漫画家?」

皆が驚きに声を上げる。

「ああ、いつも漫画ばっか描いてたからな。でも、結局小料理屋を継ぐことになって…」

田中の声に、どこか諦観が滲んでいた。夢を諦めた彼の胸中は、察するに余りある。


「私は、ただ平和な世の中を願っていた」

渡辺史郎が静かに言う。

「祖父は戦死し、父は生き延びたが心に深い傷を負った。二度と戦争のない世界を、と強く思ったんだ」

渡辺の瞳に、悲しみの影が差す。平和の尊さを、誰よりも理解しているのだろう。


「博史が漫画家になりたかったなんて、意外だったわ」

鈴木が柔らかい笑顔を浮かべる。

「ええ、結構うまかったのよ。私、博史の描いた漫画、今も大切に持ってるの」

その言葉に、田中が驚きに目を見開く。

「え、裕子、お前が持ってるのか?」

「そう。あの時描いてくれた、私の似顔絵」

鈴木の頬が、かすかに紅潮する。昔から秘めていた想いが、ほのかに顔をのぞかせた。


佐藤健太郎は、黙って皆の会話に耳を傾けていた。

仲間たちが夢を語る姿に、自分だけが取り残された感覚にとらわれる。

若い頃の自分は、何を夢見ていたのだろう。

「俺は…」

過去を探るように、佐藤は記憶をたどる。

あの頃、自分は何を願っていたのか。

仕事に打ち込み、出世したいと思っていた。妻と幸せな家庭を築きたいとも思った。

でも本当は、もっと自由に生きたかったのかもしれない。

自分の人生を、自分らしく謳歌したかった。


「トンネルだわ」

高橋の声に我に返る。

長いトンネルの中を、列車が走り抜けていく。眩しい光が、車内を一瞬覆う。

トンネルを抜けると、そこは新しい景色が広がっていた。

まるで、過去から未来へと続く時間の旅のようだ。


「あれ、雨?」

田中が呟く。

いつの間にか、雨が降り始めていた。

雨粒が、窓ガラスを伝う。雨の軌跡が、まるで涙のように見える。

「雨って、悲しいイメージがあるわ」

鈴木が呟く。

「でも、雨の後には虹が出るの。希望の象徴よ」

その言葉に、佐藤は胸を打たれた。

今の自分は、雨に打たれているような気分だ。

でもきっと、いつかは虹が見えるだろう。

新しい人生の始まりを告げる、希望の虹が。


「花巻南温泉だ」

渡辺が窓の外を指差す。

駅に降り立つと、硫黄の香りが鼻をくすぐった。

温泉の街は、どこか懐かしい雰囲気を漂わせている。

「お風呂、入ろうか」

佐藤が提案する。皆、賛同の声を上げた。


露天風呂に浸かり、佐藤は大きく息をつく。

温泉の湯気が、心の垢を洗い流してくれるようだ。

「いい湯だな」

渡辺が満足そうに言う。

「こんな風呂に入ると、昔を思い出すよ」

「ああ、学生時代、よく温泉旅行したもんな」

佐藤が笑う。懐かしい記憶が、次々と蘇ってくる。


青春時代の思い出。

輝かしい日々は、もう二度と戻らない。

でも、仲間と過ごすこの時間は、あの頃の続きのようで、かけがえのないものに感じられた。

人生の岐路に立つ今、佐藤は新たな道を見出せるだろうか。

仲間と過ごす旅の中で、きっと答えが見つかると信じたかった。


列車は東北の大地を駆け抜け、関東平野へと進んでいった。

車窓からは、広大な平野が果てしなく続いている。

のどかな田園風景が、ゆっくりと流れていく。

都会の喧騒から離れ、自然の懐に抱かれているような感覚だ。


「東京が近づいてきたわね」

高橋美香が、わくわくした声を上げる。

「東京タワーが見えるかしら」

「ああ、あれがスカイツリーか」

渡辺史郎が指差す方向には、高くそびえる塔の影があった。

現代文明の象徴とも言える建造物だ。

都会の空気が、少しずつ車内に流れ込んでくる。


「東京か…」

佐藤健太郎は、どこか複雑な心持ちだった。

東京は、彼の職場がある街だ。

日々の忙しさに追われ、自分を見失いそうになる場所。

都会の雑踏の中で、佐藤は何かを忘れてしまったような気がしていた。

大切なものを、置き去りにしてきたような感覚。

それが何なのか、まだはっきりとは分からない。

でも、この旅の中で見つけ出したいと思っていた。


「お、着いたな」

田中博史が立ち上がる。

上野駅に到着したのだ。

ホームに降り立つと、都会特有の空気が肌を撫でる。

改札を抜け、駅前に出る。

そこは、まるで別世界のようだった。


「こんなに人がいるなんて…」

鈴木裕子が目を丸くする。

行き交う人々の波。

絶え間なく流れる車の列。

都会の喧騒が、圧倒的な存在感を放っている。

「東京は、いつ来ても凄いわね」

高橋が感嘆の声を上げる。

世界有数の大都市・東京。

そのエネルギーに、心が揺さぶられる。


「おい、あれは…」

渡辺が、公園の方を指差した。

そこには、ホームレスの男性が座り込んでいる。

「悲しいね。厳しい現実を突きつけられるわ」

鈴木の瞳が、悲しげに揺れる。


佐藤は、言葉を失っていた。

毎日東京で暮らしていながら、こんな現実から目を背けていたのだ。

都会の片隅で、困難を抱える人がいる。

自分は、その事実から逃げていたのかもしれない。

「俺たちにできることは…」

佐藤は、自問する。

この問題に、簡単な答えはない。

でも、目を背けてはいけないのだ。

現実から逃げずに、向き合わなければ。


「東京ね…」

田中が遠くを見つめる。

「俺、この街で漫画家になる夢を諦めたんだ」

その言葉に、一同が田中を見る。

「上京して、漫画を描いて編集社に持ち込んだ。でも、全然ダメでさ。才能がないんだって、思い知らされた」

田中の声が、かすかに震える。

「それから、小料理屋を継ぐことにしたんだ。夢を、諦めたんだ…」

その言葉に、鈴木が息を呑む。

「博史…」

「いいんだ。もう、過去のことだから」

田中が、悲しげに笑う。

夢を諦めた彼の心の傷。

それは、今も癒えてはいないのだろう。


佐藤の胸が、ずっと痛む。

仲間もまた、心の奥に痛みを抱えているのだ。

誰もが、傷を負って生きている。

完璧な人間など、どこにもいない。

「俺も、夢を忘れていた」

佐藤が、ぽつりと呟く。

「仕事に追われて、大切なものを見失っていた。自分らしく生きること、忘れていたんだ」

その告白に、皆が佐藤を見つめる。

「でも、この旅で気づいたんだ。まだ遅くない、って。新しい人生を、歩み始められるって」

佐藤の瞳に、希望の光が宿る。

人生をやり直す勇気。

それを、彼は仲間から教わったのだ。


「私も、前を向いて生きていこうと思う」

鈴木が、力強く言う。

「後悔しないように、自分の気持ちに正直に生きる。そう決めたの」

鈴木の瞳が、きらきらと輝いている。

「裕子…」

田中が、鈴木を見つめる。

「ねえ、博史。私、博史のことが…」

その言葉に、田中の瞳が見開かれる。

「裕子、もしかして…」

二人の間に、かすかな期待が生まれる。

今まで言葉にできなかった想い。

それが、ゆっくりと芽生えてくるのだった。


「よし、次は京都だな」

高橋が、元気よく言う。

「そうね。古き良き日本の心に触れられそう」

渡辺が微笑む。

旅は、まだ続く。

彼らを待っているのは、新しい発見と再生の物語。

過去を乗り越え、未来へ進む勇気。

それを、この旅は与えてくれるだろう。


佐藤は、仲間を見渡した。

苦しみも、喜びも、共に分かち合える仲間がいる。

それが、何よりも心強かった。

「よし、行こう」

佐藤が、力強く言う。

「俺たちの、新しい人生に向かって」

皆の瞳が、希望に輝く。

列車が、彼らの新たな旅路へと進んでいく。

悔いのない人生を、歩んでいくために。


京都の古都に降り立った一行は、歴史の重みを感じずにはいられなかった。

古い街並みが、時の流れを静かに物語っている。

石畳の道を歩けば、足音が歴史に溶け込んでいくようだ。


「京都は、いつ来ても良いわね」

高橋美香が、感慨深げに呟く。

「日本の心が、ここにあるような気がする」

渡辺史郎が深く頷く。

千年の都・京都。

その佇まいは、日本の精神性を体現しているかのようだ。


「そういえば、京都と言えば…」

田中博史が、ふと思い出したように言う。

「学生時代、修学旅行で来たよな」

「ああ、懐かしい」

佐藤健太郎が微笑む。

あの頃は、何もかもが輝いて見えた。

未来への希望に胸を膨らませ、世界は自分の思い通りになると信じていた。

でも、大人になるにつれ、理想と現実のギャップに苦しむことになる。

いつしか、佐藤は夢を忘れてしまっていた。


「私、清水寺に行きたいわ」

鈴木裕子が、希望を口にする。

「音羽の滝を見たいの」

「そうだな。清水寺と言えば、あの舞台だよな」

田中が頷く。

清水の舞台から、京都の街を一望する。

そう、人生もまた、この舞台のようなものかもしれない。

今、佐藤たちは人生の舞台に立っているのだ。


清水寺までの坂道を、一同は歩いていく。

石畳が、足に心地よい。

「この道、昔と変わらないのね」

高橋が、感慨深げに呟く。

「でも、私たちは変わったわ。あの頃とは、違う自分になった」

その言葉に、佐藤は胸が締め付けられる思いがした。

変わってしまった自分。

本当の自分を、どこかに置き去りにしてきたのかもしれない。


「君らしく生きることが大事なんだよ」

ふと、渡辺が言う。

「人は、変わるものだ。でも、自分の心に嘘をつかない生き方が大切なのさ」

「史郎先生らしい言葉ね」

鈴木が微笑む。

渡辺の言葉は、いつも示唆に富んでいる。

人生の指針を、彼から学んでいるような気がした。


清水寺に到着し、一同は舞台に立った。

目の前に広がるのは、京都の絶景だ。

「わあ、素晴らしい…」

高橋が息を呑む。

「昔も、こんな風景を見たのかしら」

鈴木の瞳が、輝いている。

過去と現在が、ここで交差する。

時を超えて、変わらないものがある。

それは、仲間と共に歩む喜びなのかもしれない。


「俺、決めたんだ」

佐藤が、静かに言う。

「会社を辞めようと思う」

その言葉に、一同が驚きの声を上げる。

「健ちゃん、本気なの?」

田中が目を見開く。

「ああ。自分らしい人生を、歩みたいんだ。今までのような生き方じゃ、心が持たない」

佐藤の瞳に、強い決意が宿っている。

「応援するよ、健太郎」

渡辺が、佐藤の肩に手を置く。

「俺も、君の決断を支持する」

「健ちゃん…」

鈴木の瞳が、涙で潤む。

仲間の支えがあれば、どんな道でも進んでいける。

佐藤は、そう確信した。


「私も、ここで決心したわ」

高橋が、舞台の端に立つ。

「もっと自由に生きようって。家族とも、もっと向き合わなくちゃ」

高橋の背中に、風が吹き抜けていく。

「美香…」

鈴木が微笑む。

一人一人が、新たな決意を胸に刻んでいく。

人生の岐路に立ち、新しい一歩を踏み出すのだ。


「ねえ、博史」

鈴木が、田中に向き合う。

「私、博史のこと、昔から…」

その言葉に、田中の瞳が見開かれる。

「裕子…」

二人の間に、言葉は必要ない。

ゆっくりと、二人の距離が縮まっていく。

そっと、二人の唇が重なった。

「おめでとう!」

高橋が、嬉しそうに声を上げる。

「ついにか。待ちくたびれたぞ」

渡辺が笑う。

佐藤も、心から二人の幸せを願った。

人生には、思いがけない喜びが待っている。

そう信じられる瞬間だった。


「さあ、行こう」

佐藤が、仲間を見渡す。

「俺たちの、新しい人生が始まるんだ」

皆が力強く頷く。

過去を乗り越え、未来へ進む。

その勇気を、この旅は与えてくれた。

「次は、最後の目的地だな」

田中が、晴れやかな表情で言う。

「そう、鹿児島。日本の最南端へ」

渡辺が微笑む。

終着駅が、もうすぐそこに見えている。

でも、それは新たな始発駅になるのだ。

彼らの人生の、新しい始まりのために。


列車は、南九州の大地を駆け抜けていく。

車窓からは、雄大な櫻島の姿が見えた。

威風堂々とそびえ立つ火山。

その迫力に、思わず息を呑む。

「すごいな、櫻島は」

田中博史が感嘆の声を上げる。

「火山の力強さを、肌で感じるよ」

「自然の営みを感じるわね」

高橋美香が頷く。

人間もまた、自然の一部なのだ。

大いなる流れの中で、生かされている存在。

そのことを、櫻島は静かに伝えているようだった。


鹿児島中央駅に降り立った一行は、湾岸の景色に心を奪われた。

青い海、白い砂浜。

南国特有の開放感が、心を解き放つ。

「ここが、日本の最南端か」

渡辺史郎が感慨深げに呟く。

「長い旅だったな」

佐藤健太郎が振り返る。

北海道から始まったこの旅。

日本列島を縦断し、たどり着いたのはここ鹿児島だ。

物理的な距離もさることながら、心の距離もまた、大きく変化した。

仲間との絆が、より深まったことを感じる。


「ねえ」

鈴木裕子が佐藤に声をかける。

「この旅で、私、気づいたの。自分の気持ちに正直になることの大切さに」

「裕子…」

「ずっと、言葉にできない想いを抱えていたけれど、もう怖くない。この旅で、勇気をもらったから」

鈴木の瞳が、愛しげに田中を見つめる。

「博史、私、あなたを…」

その言葉に、田中が鈴木を抱きしめた。

「分かってる。俺も、ずっと裕子のことを…」

二人の間に、言葉はもう必要ない。

心と心が、通じ合っているのだから。


「この旅で学んだことがある」

渡辺が、海を見つめながら語り始める。

「人は一人では生きていけない、と。支え合う仲間がいてこそ、人生は豊かになる」

「史郎先生…」

高橋が頷く。

「私も、ここにいる皆に支えられてきた。一人で抱え込まなくていいって、分かったわ」

「そうだな。俺たちは、家族だからな」

田中が笑顔を見せる。

血のつながりを超えた、心の家族。

その絆が、彼らを強くしているのだ。


「俺も、新しい人生を歩み始める」

佐藤が、決意を語る。

「会社を辞めて、自分の夢に向かって進もうと思う。遅すぎるってことはない、そう信じたい」

「健ちゃん、応援してるよ」

鈴木が微笑む。

「俺も。君なら、きっとやり遂げられる」

渡辺が佐藤の背中を押す。

仲間からの支えが、佐藤に勇気を与えてくれる。

大切なのは、一歩を踏み出す勇気なのだ。

人生を変える一歩を、佐藤は踏み出す覚悟ができていた。


「ありがとう、みんな」

佐藤が、心から感謝の言葉を口にする。

「この旅で、俺は自分を見つめ直すことができた。新しい自分に出会えたんだ」

「私たちも、健太郎に感謝してるわ」

高橋がウインクする。

「君がいたから、この旅は最高の思い出になった」

「ああ、俺もだ。最高の仲間に出会えた」

田中が佐藤の肩を叩く。

かけがえのない仲間との出会い。

この旅は、佐藤に多くのものをもたらしてくれた。


「よし、最後に記念写真を撮ろう」

渡辺が提案する。

「いいね! 最高の思い出を形に残そう」

高橋が賛同する。

五人は、櫻島を背景に並んだ。

「はい、チーズ!」

シャッターが切られる。

この瞬間が、永遠に記憶に刻まれる。

笑顔、涙、喜び、悲しみ。

全てを共有してきた仲間との、かけがえのない一枚。


「楽しかったね、この旅」

佐藤が、しみじみと呟く。

「ああ、最高だった」

田中が頷く。

「また、みんなで旅行に行こうね」

鈴木が提案する。

「賛成。次は、海外旅行なんてどうだろう」

高橋の瞳が、期待に輝く。

「いいな。是非実現させよう」

渡辺も乗り気だ。

新たな旅の計画。

それは、彼らの人生にまた彩りを与えてくれるだろう。


列車に乗り込む一同。

青春最後の思い出の旅は、終わりを告げた。

だが、彼らの人生は、新たな一歩を踏み出したばかりだ。

「また会おう、みんな」

佐藤が、力強く言う。

「ああ、必ず」

渡辺がうなずく。

「健ちゃん、元気でね」

鈴木が微笑む。

「また飲もうぜ」

田中が親指を立てる。

「ええ、私の家においで。みんなを招待するわ」

高橋が嬉しそうに言う。


別れの時が来た。

しかし、これは終わりではない。

新たな始まりなのだ。

「さようなら、そしてまた会う日まで」

佐藤が、心の中で呟く。

列車が動き出す。

車窓から、仲間の姿が遠ざかっていく。

でも、心の中では、いつも共にいる。

そう信じている。

「俺の人生、これからが本番だ」

佐藤は、希望に満ちた瞳で未来を見つめた。

夢に向かって、新しい人生の一歩を踏み出すのだ。


そう、人生の終着駅なんてない。

いつだって、新しい旅立ちがあるのだから。


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ラストラン、僕らの青春 島原大知 @SHIMAHARA_DAICHI

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