就寝前焼酎1合服薬13錠睡眠時間4時間

水森 凪

第1話

少女は毎日考える

毎日同じ制服を着て学校へ行って

明るいまなざしの友達と笑い話をしながら


きっとこんなこと考えているのはじぶんだけだと


寿命が近づいた老人に聞きたい

死ぬことは恐ろしいですか?

生きることはそれよりもこわくはなかったですか?

尖った山の稜線を歩くような心地で過ごしたことはないですか?

心が丸ごと別世界に持っていかれるような境地になったことはないですか?

理由も原因もない闇に引きずり込まれてこころの視力を失ったことはないですか?


わたしは全部あります だからくすりなしではいちにちもいきられません

家族以外このことは誰も知りません

楽しそうな顔をしていないと学校でひとりぼっちになってしまうから


世界は、自分の存在はいつも不可解で

なにかの引っ掛かりがあるとすぐ迷宮に堕ちます

そこは漆黒ではなく狂気の色に満ちていて

万の色を抱えるオパールの輝きを見るようにはてしなく怖いです


いつ安心できるのか

いつわたしはこの世を生きる健康な魂の人々と同じ現実感を得ることができるのか

一生望んでも手に入れられない夢なのか

お医者様はただただ薬をくれるだけ

ほんの少し眠るための


人身事故でただいま列車は各駅に停車していますと聞いて

救いの手に出逢ったように

ああこれが現実だ死はあるこんな近くに

いつでも手に入ると安心するしてしまう

死んでしまった人たちごめんなさい

でもわたしはあなたたちが羨ましい

産んでくれたやさしいお母さんごめんなさい

でもわたしはあの人たちが羨ましい


上高地の梓川の

ソーダブルーに透き通った水底に化石のように横たわる真っ白な古木

あればかりを思っているの

あんな清浄な白骨になるまで長いこの世を生きる

生きねばならない

化石になるまで

この心が清冽な水に洗われて

たましいがカリカリした化石になって

もういいよと神様に血のつまったおもたい肉体をとりあげてもらえるまで

そう思ってたえているの 笑っているの 生きているの だから


だれか


ほめて


                           <了>


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就寝前焼酎1合服薬13錠睡眠時間4時間 水森 凪 @nekotoyoru

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