第5話 攻略法
「何が起こってる?」
ミズイは後ろにあるデーズの死体と、前を通っている執事を見比べる。
目の色や髪型、眼鏡をかけていること、髭の形、服の色など、いろいろなところが同じで、ほとんど同一人物と言って良かった。
「あの二人……もしかして双子なんでしょうか?」
「いや、どうだろうな……。もしかしたら能力によって作り出されたクローンか、あるいは……」
ランゲルはそう言って再び考え出す。
「うん。奴は何かしらの能力で呼び出されている可能性が高い。死んだ人を復活させる能力が確認されていないことはないが……」
「えぇっ!?能力によっては死者が蘇ることもあるんですか?」
「ああ。ドクト。こいつに能力で死者が蘇るっていう証拠を見せることも兼ねて、後ろにあるデーズの死体に手術を頼めるか?」
「わかりました」
手術、という言葉がミズイの頭の中をよぎった。これから何をする予定なのだろうか?そう思ってミズイは後ろを振り向いた。
ドクトは針のようなものやナイフ、薬などを取り出していて、一体全体何をしようとしているのか、無学なミズイには見当もつかない。しばらくすると、デーズの死体が起き上がる。
「何をしたんですか、ドクトさん?」
「これが私のもう一つの能力だ。私は自分で触れて殺した死体に手術をすることで、その死体を操る能力も持っている」
「あ、あの……でも復活させて大丈夫なんですか?殺された恨みで襲いかかってくるとか……」
そう言われると、ドクトはミズイの変な不安を少し笑う。
「そんなことがあったら復活させるメリットがないじゃないか。こいつは私の命令通りに動く性質を持つ。試しにあそこにいる男を殺させてみよう」
ドクトはその後、よみがえったデーズの死体に「やれ」と小声で言いながら、デーズと瓜二つの男を指差す。すると、デーズは瓜二つの男に向かって全力で走ってくる。瓜二つの男はその方向を向く。
「あれは……私!?なぜもう一人いる?」
全力で走った後、勢いよく瓜二つの男を腕で締め付けるデーズ。その後、数十秒ほど乱闘になった。
「まさか……私自身に倒されるとは。一体これはどういうことだ……?」
瓜二つの男は地面に倒れ伏し、そのまま首を締め付けられ殺された。死の直前に瓜二つの男は蘇生したデーズの首をナイフで力強く切断した。
「『私自身に倒される』…………?」
何か引っかかったような顔をしていうランゲルに、ドクトとキャストルは少し不思議に思いながら顔を向ける。
「何か引っ掛かることがあったんですか、ランゲル隊長?」
「ああ。さっきの発言がちょっと気に掛かったんだ。こいつが死に際に放った発言からして、こいつら二人は本質的に考えると同じ存在なのかのかもしれない」
「それがわかったところで、結局どうすればいいんですか?」
「まあまあ落ち着け。一つ、こいつを何回か殺す。二つ。殺すたびにこいつが次に出てきたところを調べる。三つ、さっき言った二つを繰り返してこいつの発生源を突き止める」
「そ、そんな手間のかかる方法……」
「ああ。手間がかかるだろうな。だがここにいる奴らの中にこれより効率のいい手段を取れる奴は存在しねえ。まあ、地道に行くぞ」
「あっ!じゃあ、この子達に任せてあげてください」
「この子達?」
ミズイはそう思いながら不思議そうな顔でクロシェの方を向く。そこには何人か手をあげてミズイの方を向いているテディベアがいた。
「はい。この子達は私の命令ならなんでも従ってくれるんですよ。ちょっとやってみます?」
「いいけど……その子たち、人を殺せるくらいの実力はあるの?」
「はい、無能力者ぐらいだったら殺せると思います!それと、もし仮に殺せなくても本拠地が偶然見つかるかもしれません!」
「なるほど……それは頼もしいな。よし、じゃあとりあえずそのテディベア共に命令しろ」
「わかりました!クマちゃんたち、このお爺さんの出てきたところを探してくれない?」
クロシェがそういうと、テディベアたちは進んで彼女の命令を受け入れ、各地に散らばった。このテディベアたちは喋れないのか、返事するときに一言も発さずに首を上下させることしかしなかった。
そこから10分ほどした後、テディベアの1匹がこちらの方に帰ってきた。彼か彼女かはわからないが、そのクマはクロシェの服の裾を引っ張り、特定の方向を指差した。
「あっ!クマちゃんが見つけたようです。あの方向に向かいましょう」
「わかった」
クロシェのクマが指差した方向に向かって、一同は列を組んで歩き出す。そこにはクマに針を刺されて死んだとみられる、たくさんのデーズの亡骸があった。
(うわぁ……これ全部、クロシェちゃんのクマたちがやったのか……見かけによらず怖いなあ、このクマたち……)
そう思いながら歩いていると生きているデーズに遭遇したので、ドクトの能力で殺害した。そのまま歩き続けていると、どこからともなくハンドベルの音がした。
そこに入ってみると、そこには「662」の数字を持つ少女と、デーズがいた。
――――――――――――――――――――――――――
作中能力の元ネタになったSCP
SCP-662 - 執事のハンドベル
http://scp-jp.wikidot.com/scp-662
次の更新予定
毎週 木曜日 10:30 予定は変更される可能性があります
SCPウォーズ 益井久春 @masuihisaharu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。SCPウォーズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます