小説を書くなんてのは、悪い恋みたいなものだろ

共有の場所、景色のいい給水塔
そこで語られる、他人のような父親の話

霧のように本だらけの部屋を焦げ臭くして

彼の父親は、脱け殻のようになった蔵書を残して死んだ
いい時代だった
まだ出版社にも本気で良い作品を世に出そうとして仕事をしている人間が大勢いた
一冊の本を誇りをもって出していた頃

一方通行の恋文
小器用なだけで本は出せても
半年後には消えていく

煙草の煙のような人生と
執筆という、悩ましき毒