人生果実の味わいと、エンディングノートの自己決定。そして隠された闇。

 かつて、伝説の哲学者が「人生の果実は、既に味わい尽くした。これ以上生きていても、苦痛が待つばかりだ」と、享年65で自決しました。彼の最後の考察をまとめた本は、今でも私の聖典です。

 ・・・という事を、この作品を読んで、改めて思い出しました。しかし、18歳で「人生の果実を味わい尽くす」事は出来るわけがなく「最高の状態を、死によって永久に保存する」くらいに、彼は考えたのでしょう。

 また、終末医療の医者が「人生のエンディングノートは自分のもの。家族や医者に、明け渡して後悔しないか?」という問いをしました。自殺は確かに「自分の死を、好きなタイミングで、自分だけのものにする」合理的な道でしょう。

 人は、最適解のみで生きるにあらず。頭では分かってても。自分は、この作品に対する大きな共感を、抑えることが出来ません。
 人生100年時代は「もし望むなら、100まで生きてもいい」という選択肢。さあ、どのタイミングで断ち切ろうか?