私の罪

 世界には、『知る』という罪がある。


 それならば何も知らなければ良いのか?


 確かにそうなのかもしれない。

 だが、それは不可能だ。

 世界で生きているのなら、何も知らずにはいられない。


 目で見て、耳で聞いて、手で触って……、世界にはたくさんの情報がある。

 知りたくないのに、見てしまったり聞いてしまったりすることもあるだろう。


 世界には、『知らせる』という罪がある。


 私はそれを犯している。


***


 この世のものではない存在、それが吸血鬼。

 この世界で吸血鬼は、架空に住む者であり、現実に存在してはならない。


 何の因果か、存在してはならないはずの吸血鬼はこの世界に生まれ落ちた。


 私の存在は世界に歪みをつくり出す。

 時空、人の心、気候、生態系……。完璧だったはずの世界は歪んでいった。


 私を知ってしまった者も、その歪みに巻き込まれることとなる。


 ならば誰にも知られずに過ごせば良いのかもしれない。

 だが、それはできない。


 太陽の石を集めなければ歪みがより大きくなってしまうから。

 石を集める過程で、その石の所有者に私の存在を吸血という形で知らせなければならないから。


 せめて、歪みが大きくならないようにするのが、この世界に生まれ落ちてしまった私の贖罪だ。

 罪を贖いながら罪を犯すという矛盾したことをやっているのは分かっている。

 だが、それでもやらなければ。


 今日も私は罪を重ねる。


 罪と知って罪を重ねる。

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罪と知って罪を重ねる 色葉みと @mitohano

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