アウターダージュ

屑木 夢平

アウターダージュ


 西の空に七色の彗星が流れる夜


 僕らを乗せたスリーピングポッドは人知れず打ち上げられた


 世界から見捨てられた午前二時


 一度限りの放物線軌道と交差する棺のなかで


 催眠ガスで満たした肺を青白く輝かせながら


 走馬灯のように浮かんでは消える傷だらけの記憶に僕らは思いを馳せる


 かけがえのない出会いがあった


 忘れがたい別れがあった


 生きていこうと思える喜びがあり


 その倍の悲しみがあった


 賑やかな昼間に呑みこんだ屈辱があり


 囁きさえも聞こえない夜を切り裂く叫びがあった


 臆病ゆえの勇み足があり


 あとであとでと言って辿り着いた後の祭りがあった


 摩擦で毛羽だった心を独り磨く平日があり


 何かになりたいという夢が夢のまま終わる週末があった


 替えがきかない希望は消えて


 持続可能な絶望だけが残った


 いまやすべてが宇宙のデブリとなって消えていく


 遠く追憶の月面に刻まれたリルは


 枯れることのないはずの涙が枯れてしまった跡だ


 ああ、友よ


 宇宙の叙事詩に埋もれようとする名もなき叙情たちよ


 西の夜空に彗星を探してくれ


 その隣に弱々しく輝く白色矮星


 それが僕だ

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