第3話 根性面接

壮絶な入校式の練習を終えても、警察学校では休む暇もない。


助教官の言いつけ通り、移動の際には3歩以上駆け足、ここ3日間は常に走っている。


全然体力が無くても必然と付いてくる。


それぐらいにはしんどいのだ。


入校式の練習で体力を使い果たしてしまい、学級員全員がヘトヘトだったが、それに追い打ちをかけるかのように


「根性面接がある」


と訳の分からない話が出てきた。

この根性面接とは、文字通り学生の根性を試す面接である。


システムは単純で峰教官、山田助教官が面接官で、それに学生が教官2人に聞かれたことを答えるというものだ。


当たり前に、答えたことでかまされる。

どんな答えをしても怒鳴り散らされる。

そんな面接である。

一日の日課時限が終わり、全員、寮に戻った。


各人、明日の入校式の準備を始めているときに、原田指導学生が各部屋に


「根性面接あるから名前呼ばれたら来てな」


と呼び掛けをしていた。

どうやら学籍番号順に呼ばれるらしい。


(警察学校では放課後のことを日課時限後という)


「入校式の準備もせなあかんのに日課時限後に根性面接ってやばない?」


と部屋員で話をしていると、もう既に何名か呼ばれて行った。


ここで、学籍番号が後ろのやつは間違いなく

「戻ってきたらどんなんやったか聞こう」

と考えるのが普通であるが、そこも峰教官には見抜かれていた。



「なあ、なあ、根性面接どんなんやった?」



と早く戻ってきた、池永巡査に話を聞こうとしたが池永は首を横に振り、続けて言う。


「峰教官に言うなと口止めされた、悪いけど今は話すことが出来ない」



と答えた。

さすが、教官とはいえ本物の警察官。

完全に見抜かれている。

覚悟を決め、呼ばれるまで待つしかないと思い、入校式の準備を進めしばらく経つと、ついに順番が回ってきた。


原田指導学生から


「次はお前の番やから31教場に行ってくれ」


と指示を受けた、緊張で喉から心臓が出てしまいそうになっているのを堪えながら、寮から走って31教場に向かった。

教場の前に着くと、200期の4学級で根性面接が一斉に行われていた。

すると、隣の学級の教場から


「お前警察舐めてんのかぁ!!!」


教場の前の廊下に響き渡るほどの怒声が聞こえてきた。

一気にその前で待っていた僕を含めた他の学生にも緊張が走った。

次は僕の番だ、31教場から前のやつが出てきて、無言で帰っていった。


僕はノックをして


「失礼します!!」


できる限り大きな声で入室した。

峰教官が


「座れ」


という、僕は


「失礼します」


と着席した。

峰教官から質問が来る


「なんで警察官になろうと思った?」


意外と普通の質問だったので、普通に答えた



「父も警察官で日々頑張っている姿に感化されました」



すると峰教官から

「お前親父が警察官やからって警察学校舐めてんのちゃうやろな?」


「お前の親父が偉かろうが俺は容赦せんからな、死ぬまで追い詰めたるわ、卒業させへんからなボケが」



当時僕の父は階級でいうと警部。


当然峰教官は警部補なので階級的にも拝命や年齢でも父の方が上だった。


普通の質問に、めちゃくちゃな勢いで返されて正直びっくりしたところもあったが、ここは警察学校。


返事はもちろん爆音で



「いえ!!」



である。


と、この調子の根性面接であったが、僕自身にそこまで怒鳴るようなネタが無かったこともあり無事終了。


理不尽なことを言われたが、根性面接と言うぐらいなので気にしなかった。


全員の根性面接が終了し、一段落ついたとき、学級員のみんなで根性面接がどうであったか話をした。


中には、入室するやいなや、峰教官から


「お前は腕立ての姿勢で面接しろ」


といわれ、腕立ての姿勢のまま怒鳴り散らされたという話もあった。(※まじの実話です)


壮絶な一日を終えて、各々寝る準備に取り掛かった。


すると僕らの向かいの部屋が騒がしい。


気になっていたが、同部屋の真面目な濱野谷が


「気にすんな、こっちまで巻き込まれるから、ほっとこうぜ」


と言うのでその日はそのまま床についた。


一方、向かいの部屋では



「おいおい、電気勝手に消えたぞ!!」

「お化けちゃうんか!?」



と騒いでいた。


確かに、電気をつけると直ぐに消える。

その部屋の全員が怖くなりすぐに寝ることにした。

その時の時間は既に消灯時間の23時を過ぎていたことも知らずに。

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~警察学校記~ とこたろす @2762580

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