スーパー帰りたい

磯田有季

スーパー帰りたい


その角砂糖、なに。と言ったら、その子は驚いた顔をした。それよ。それ。それ!首の!


ネックレスだよ。とその子が言った。角砂糖を?と言った。角砂糖のネックレスなのね、と納得した、つもりでいた。たぶん夢の中だから細かいことは気にしなくていい。


死んだお兄ちゃんの形見の角砂糖なんだよと教えてくれた。お兄ちゃんがなぜ死んだのかは教えてくれなかった。


死んだら人は角砂糖ひとつ置いていくのよ。お兄ちゃんはこれを、ママでもパパでもなくあたしに預けてくれたの。魂でしょ。


たましいでしょ??


魂でしょ。


この世界では角砂糖は魂なのか、と非合理的な設定にも納得したふりをしておいた。その方が都合がいいの!


ねえ。もしかしたらこれ、ちょっとお兄ちゃんの味がするかも。舐めたくないけど。


舐めればいいじゃない。


舐めたらなくなるでしょ!


そっか。


ねえ、あんたにも、角砂糖があるんだよ。生きてるうちは、角砂糖見れないけど。


へえ。


死んだらあんたのママとかパパとかが回収するの。


へえ。


綺麗な形の角砂糖になるといいよね。


なんで。


綺麗な方がお墓に映えるでしょ。


デカいほうがいいよ。


なんで。


その方が甘くなるもん。コーヒーとか。



実利だね。



実利?



実利。



大きい角砂糖の方がいい。にこもさんこもよんこもポチャポチャ入れるより。

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スーパー帰りたい 磯田有季 @tyoutyouhujin

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