其の二 異世界らしいよ

 散策するとは言ったもののどこへ行けば良いのだろう。というか赤子が立ち歩いたらもっと驚かれるんじゃないか。なので深夜に散策することにした。



    ★



 そして深夜。


 俺は今世で隠密カバーから隠密行動カバーアクションにレベルアップした能力を使って寝かしつけられている寝具を出た。


 この家は広く、かなり充実しているらしい。昼間聞き耳を立てていた時に分かったのは、ここは「アルマドゥーラ」という貴族の貴族領でそのアルマドゥーラ貴族領主が俺の父親"バウル・アルマドゥーラ"、アルマドゥーラ領主夫人=俺の母親が"ガリア・アルマドゥーラ"という事だ。


 この家から出るのは時間がかかりそうなので とりあえず今いる部屋や近くの部屋を探してみよう。



   ★



 朝になった。


 昨日散策してみて分かったことがいくつかある。まずここは俺の居た世界では無いということ。


 母親の部屋で本を見つけたが、読めるものの知っている言語では無かった。それにこの家は建築方式か全く違う。俺の居た世界では木造建築しか無かった。が、この家は石造建築らしく床には大理石を使うなど結構な豪邸だ。


 それから、窓から見える景色が明らかにおかしい。天へと高く果てなく遠く伸びている峰々があり、空には羽のある人間や大きな翼を持ったトカゲが飛んでいる。下に見える民家は彩り豊かで店の屋台には見たこともないものが沢山置いてある。



 母親が俺の事を起こしに来た。俺は母親の腕に抱かれて広い食卓につく。母親は俺に食べ物を食べさせるが、その顔は決して笑ってはいなかった。


「この子は…どうするべきなのでしょう。」


 母親は父親に尋ねる。父親も困り果てている。それもそうだ。こんな人間か化け物モンスターかも分からない、見た目もおかしい子供を手元におき、育てる親なんて普通居ない。それに、俺は昨日と比べてもひとまわり程体が成長している。成長速度も引き継がれているらしい。このままでは更に疑問も増えるだろう。


「教会で見てもらおう、なにか悪いものが憑いているのかも知れない。」


「えぇ、そうしましょう。可哀想な子…どうしてこんな事に……。」


 父親の意見に同意する母親のその目は水分を含み、今にも零れそうにしながら俺を我が子への愛と見た目への嫌悪が混じった目を俺へと向けていた。




    ★




 恐らく、教会へ連れていかれる。


 教会へ連れていかれたらどうなる?俺は殺されるのか、それともこの世界では俺を人間にできるのか。はたまた別の選択肢があるのか。色々な考えが頭をよぎるが、『殺される』その考えが頭から離れなかった。






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混血転生者の異世界日記 @tyeri_sakura

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