あとがき
ついに完結しました「美郷学園レーシングカート部、金髪の織姫(ベガ)」。いかがでしたでしょうか。
本作は私が脳内で温めているアイデアの中で、私が若い頃に手慰みでやっていたレーシングカートを題材にした物語を取り上げてみました。
とはいえ舞台設定や格付けをどうするかは思案のしどころでしたね。何せカートといえばレースの底辺であり、また基本でもある立ち位置なのです。
なのでキャラ達にあくまで遊びとして扱わせるか、本格的に全日本や世界を目指させるか、あるいはF1へのステップアップとして描いていくか、選択肢は結構あったんです。
でも、私の当時の実力がそもそも上を目指せるようなモノじゃなかったんで、それなら底辺らしく楽しく、そして真剣にレースをするお話にしようと、高校生の部活動というセンで話作りを進めていきました。
ほら、最近の漫画やアニメでよくあるじゃないですか。女子高生がキャンプとか釣りとかDIYとか、やたらおっさん向けの趣味にハマる奴(笑)。
そんなノリで主人公を女子高生に決めたんですが、普通の女子じゃイマイチ面白味に欠けると思って、思い切って留学生、それもアメリカ金髪碧眼イケイケガールにしてみました。
モデルとしては「ハイスクール奇面組」のナンシー・トルネアータや「To Heart」の宮内レミィみたいな、昭和のイメージのポジティブ金髪娘をイメージしていました。
結果的にこのキャラ立ては大成功でしたね。何せ作者が舞台を与えてやるだけでガンガン話を進めてくれるんですから。
近年のラノベやWeb小説は、主役も脇役もネガティブなキャラが多く見られます。それは現実に夢を見れない今の若者たちが、小説の中でもそんな自分にシンクロしつつ、かつ物語の中で自分に都合のいい展開を望むお話が好まれるからのようです。
本作の主人公ベガちゃんは、そんな陰気なキャラクターを無理矢理、お日様の下に引っ張り出すようなエネルギーを持つ主人公として描きました。
イルカや星奈、他の登場人物もベガが来なけりゃもう少し平穏な一年を過ごせたでしょうが、彼女が来た事でより熱くエネルギッシュな人生になりました。
そう、人は人と接して変わって行くものなんです。そんな若者の姿を一番に描いていきたかったんですよ。
先述の女子高生がオヤジ趣味に走る漫画やアニメは、なによりその作品がその世界に詳しくなければ物語りとして成り立ちません。某キャンプ漫画も某釣り漫画も、作者さんがその道のエキスパートであるからこそ、お話が深く濃くなるのです。
なので私のカートの経験を存分に盛り込んで、やや玄人向けのお話に仕上げてみました。とっつきにくい部分もあるでしょうが、レースの世界の緊張感や雰囲気を出来るだけ出してみたいと思い、そういう過程をあまりはしょらずに綿密に描いていきました。
まぁ、なので興味の無い方には全く受けないでしょうけど(苦笑)。
主人公の名前は色々と悩みました。パッとアメリカ人と分かる名前で、他作品と被らないオリジナリティ、そして覚えやすい名前という点でインパクトを取りたかったので。
で、思いついたのが有名な格闘ゲーム「ストⅡ」のラスボス、ベガでした。日本では普通にサイコパワー軍人でしたが、輸出用では名前がバイソンに変わってるんですよね。コレ、外国じゃベガって名前がこと座の一等星、つまり織姫星と重なる女性のイメージであるそうなんです。
今までにない字面で、かつヒロインの名前と明確に分かるその「ベガ」の名を「これだ!」と思い採用しました。
と、なれば彦星も用意するのが、ボーイミーツガール大好きな私の性です(ヲイ)。
イルカ君はそのためにライバルと恋人を兼ねたキャラとして設定されたキャラなんです。こちらはあくまで無個性に透明なキャラとして、ベガによって次第に色を付けられていく存在として描いていきました。
ほら、登場で言えば星奈や社長、白雲夫妻より後なんですよ、彼。そんな脇役然として出てきた彼が、作中でどんどん出世してヒロインにまで成り上がるのもうまくハマりました。
私は二次創作含めたらもう10年くらい書いてますが、レース小説を書くのは実は本作が初めてでした。
これがなかなか難しいんですよね。レースというのはまずその迫力からして非日常といえます。人力じゃ出せないパワーを持つ機械を操って競ってるわけですから。
スピード、パワー感、耳をつんざくエキゾースト、ガソリンやオイルそしてタイヤの焼ける臭い。とても文字では伝わらない過酷さや重厚なストレスがいっぱいなんです。
女子高生にそれをさせるに当たって、その辺の困難さをどう描くかが大きなキモでした。
なので本作の本当のリアルは、2話のカートに悪戦苦闘するベガの姿にこそあるんですよ。あの過酷さこそモータースポーツの偽らざる姿なんです。
初っ端にあの厳しさを描くことで、よりこの世界の深さを表現できたかな、とも思うのですが、読者の皆様にはどう映ったでしょうか。
最後になりますが、本作は昨年惨敗したカクヨムコン9のリベンジ作品の1の矢として、魂を込めて描いた作品でもあります。
今年こそはカクコン10で中間突破をする為、次の2の矢の作品と共に出した取って置きでもあるんです。
なのでここまで読んで頂いた読者様には本当に感謝しかありません。星やハートやレビュー、そして数々の応援コメントを頂いたことで、大いに今年こそは! との自信になりました。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。それでは次回作でまたご縁があればお会いしましょう。
By 素通り寺(ストーリーテラー)
美郷学園レーシングカート部、金髪の織姫(ベガ) 素通り寺(ストーリーテラー) @4432ed
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