美しい文章、今書かれるべき物語

しっかりと整えられた音で、文章として大変美しいです。
音読したくなります(というか音読しました)。
この小説で素晴らしいのは音の美しさや仕掛けだけではありません。
次の表現もまた大変素晴らしいものでした。
「怖いんだ!!怖いんだよ!!
あの眼が、わ、私の前に再びやって来るのがさあ!」
大変センシティヴな問題ですが、私たちは今でも作中のことば通り「塞がったた耳のまま談笑」していることが多々あるような気がします。
それに対して、純粋な恐れ、善性の現れとしての恐れというものは、何かしらの糸口につながるものではないかと思うのです。
繕光橋さんがどのように考えて、この作品を書かれたかは、当然私にはわかりえないことです。
それでも、私はこの作品から読み取ったものに救いと未来への光を垣間見た気がするのです。
今このときにこのような作品が書かれたことを嬉しく思います。