第1話 死亡

ピピピピピピ!

スマホのアラームが鳴り、朝になったことを大音量で伝えてくる。

布団をどかし、ゆっくりと体を起こすとスマホの画面を操作しやかましいアラームを止める。


「うへぇ」


もう一度布団を被ると2度寝を始める。

10分程経つと再びアラームが鳴りだし、俺は仕方なく起きてベッドから這い出す。いい加減起きないと大学の一限に間に合わない。


自分の部屋から出ると、おぼつかない足でリビングに向かう。リビングのテーブルにはラップをされた味噌汁とオムレツが置いてあった。


「母さんもう出かけたのか、そういや人気の小物屋こものに友達と行くって言ってたな」


いつもならこの時間は母親は洗い物や洗濯をしているのだが、人気なお店に行くために朝から出掛けているらしい。ちなみに母親は小物集めが趣味で机や階段、トイレなど至る所に小物が置いてある。


俺はまだほんのり暖かいオムレツと味噌汁を電子レンジで温め直し、それからご飯を炊飯器から盛って冷蔵庫から納豆を取り出すと手を合わせて食べ始める。


「いただきまーす」


スマホを見ながら朝ご飯を食べ終わると、自分の部屋に戻って適当に服を選んで着る。

洗面所に行って歯磨きと髭剃りなど諸々をした後、バッグを持って家を出る。


「それにしても暑いな」


この前梅雨が明けたばかりだというのにめちゃくちゃ蒸し暑い。堪らず近くの自販機で飲み物を買う事にする。


「んー、お茶でいいか」


俺は麦茶を買おうと財布を取り出す。

財布を開くと学生証が入っており、もさっとした冴えない青年の証明写真が貼り付けてあり、その横に「松本『まつもと』 悠真『ゆうま』」と書かれている。


「いい加減学生証の写真変えたいな」


俺は愚痴を言うと麦茶を買って歩き出す。


悠真は現在大学2年生でそれなりに身だしなみを整えている。高校は工業高校だったがと男子校と間違うほど女子が居なかったので見たを特に気にせずに過ごしていた。しかし大学に通うとなると沢山の女子がいる訳で、

今では身だしなみにも気を遣い、ずっと黒だった髪も薄い茶髪に変えている。

そんな訳で見た目に気を遣う前に撮った学生証の写真が少し恥ずかしいのだ。


ちなみに大学は私立の普通の4年制大学だ。

普通の大学に行ったのは「工業はもうお腹いっぱい」、「まだ働きたくない」といのが理由だ。工業高校に入ったのも前期選抜が面接だけで普通に勉強するより楽そう、というのが理由だ。

松本悠真という男はできるだけ楽をして生きていきたいのだ。


「はぁ、確か2限目の講義は中間試験やるとか言ってたな。期末試験だけでいいのに、めんどくせー」


俺は2限目の講義に憂鬱ゆううつな思いを向けながら大学に歩いてゆく。


ふと前を見ると空に赤い光が見える。


「ん?なんだあれ?」


一瞬飛行機かと思ったが、飛行機にしては大きい。

赤い光はゴォォォォォォッ!と音を立ててどんどん大きくなっていく。


「まって、なんかこっちに来てね?」


赤い光は更に大きく、つまり近付いてくる。

中心には黒い球状の物体が見える。それは一瞬で悠真の目前に迫り…


「え?嘘だろ?ちょっ、まっ…!」


ズドォォォォォォォン!!!!!


赤い光は轟音を響かせながら悠真と衝突した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

眷属達は世界を喰らう。 ウルシの葉 @urusinohappa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ